がん免疫療法とは
がん標準治療の問題点と最新のがん治療
がん標準治療の問題点
がんに対する標準治療には手術、抗がん剤、放射線療法の3つあります。いずれも進行がんに対し大規模臨床試験によって延命効果が証明されています。
手術
がんをできるだけ切除し取り除く
抗がん剤
化学物質によって
がん細胞の増殖を抑える
放射線
放射線を浴びせて遺伝子を破壊する
一方で、以下のような大きな課題も抱えています。
①全ての進行がんの患者様に対して行えるわけではない
②効果が途中から無くなってしまう
③強い副作用によって継続が困難になったり、むしろ身体機能を低下させてしまう(免疫機能の低下も含む)
がん細胞の特性
①同じがんでも患者様ごとにがん細胞の性質が異なる
②時間と共に変化し、様々な遺伝子変異を持つがん細胞の塊を形成していく
③免疫機構を抑制し免疫細胞の攻撃から逃れている
がん細胞が本質的に抱える問題として、がん細胞は正常細胞から発生するので正常細胞と細胞内分子カスケードが共通していること、遺伝子変異を繰り返しながら分裂増殖するのでがん細胞の性質が極めて多様性に 富むこと、がん細胞に対する免疫機構を抑制しがん免疫から逃避していること、などが徐々に明らかになってきました。
これらのことが示していることは「がん細胞はグレた正常細胞」と言うほど単純なものではないということです。同じ種類のがんであっても実際は患者さまごとにがん細胞の性質は大きく異なり、またそれも時間と共に変化して、多種多様な遺伝子変異を持つがん細胞の集塊を形成していきます。
したがって、がんに対して画一的な治療法を実施することは、がんの細胞生物学的な特性からして本来的に限界があります。理想的ながん治療は患者さま一人ひとりの状態に合わせた「個別化医療」を実施することです。
最新のがん治療
そして最新のがん治療の発想は主たる攻撃単位が分子から細胞へと徐々に移行しつつあります。元々免疫細胞はがん細胞を攻撃する機能を有しているので、従来の技術を併用しながらも最終的に免疫細胞ががん細胞をしっかり攻撃できるようにするのが理想であるという考え方です。
これが広い意味で「がん免疫療法」と呼ぶことができます。その象徴として2018年に本庶佑教授らがノーベル生理学・医学賞を受賞した「免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用」が挙げられます。
免疫チェックポイント阻害薬を使用すると免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになることを証明しました。2018年をも ってがん免疫療法が世界的に認められたと言えます。
院内にて作成
がん細胞が増える仕組みと解決策
正常細胞が遺伝子をコピーして分裂増殖する際に、様々な遺伝子変異を生じて発生した異常細胞(以下では広義でがん細胞と呼びます)は免疫細胞によって除去され続けています。しかしそのうち免疫細胞からの攻撃をかわす遺伝子変異を獲得したがん細胞が発生し、それが増殖して集塊を形成します。
この細胞は更なる遺伝子変異によってがん原発巣から離れた部位での免疫機構をも制御し始め、様々な臓器に転移巣を生じるようになると考えられます。