​がん免疫療法

​がん標準治療の問題点

がんに対する標準治療には手術、抗がん剤、放射線療法の3つあります。いずれも進行がんに対し大規模臨床試験によって延命効果が証明されています。一方で、全ての進行がんの患者様に対して行えるわけではないこと、効果が途中から無くなってしまうこと、強い副作用によって継続が困難になったり、むしろ身体機能を低下させてしまう(免疫機能の低下も含む)ことがあること、など大きな課題も抱えています。

​手術
がん免疫療法 手術
​がんをできるだけ切除し取り除く
​抗がん剤
がん免疫療法 抗がん剤
​化学物質によってがん細胞の増殖を抑える

​がん細胞の特性

​放射線
がん免疫療法 放射線療法
​放射線を浴びせて遺伝子を破壊する

がん細胞が本質的に抱える問題として、がん細胞は正常細胞から発生するので正常細胞と細胞内分子カスケードが共通していること、遺伝子変異を繰り返しながら分裂増殖するのでがん細胞の性質が極めて多様性に富むこと、がん細胞に対する免疫機構を抑制しがん免疫から逃避していること、などが徐々に明らかになってきました。これらのことが示していることは「がん細胞はグレた正常細胞」と言うほど単純なものではないということです。同じ種類のがんであっても実際は患者さまごとにがん細胞の性質は大きく異なり、またそれも時間と共に変化して多種多様な遺伝子変異を持つがん細胞の集塊を形成していきます。したがって、がんに対して画一的な治療法を実施することは、がんの細胞生物学的な特性からして本来的に限界があります。理想的ながん治療は患者さま一人ひとりの状態に合わせた「個別化医療」を実施することです。

​最新のがん治療

​そして最新のがん治療の発想は主たる攻撃単位が分子から細胞へと徐々に移行しつつあります。元々免疫細胞はがん細胞を攻撃する機能を有しているので、従来の技術を併用しながらも最終的に免疫細胞ががん細胞をしっかり攻撃できるようにするのが理想であるという考え方です。これが広い意味で「がん免疫療法」と呼ぶことができます。その象徴として2018年に本庶佑教授らがノーベル生理学・医学賞を受賞した「免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用」が挙げられます。免疫チェックポイント阻害薬を使用すると免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになることを証明しました。2018年をもってがん免疫療法が世界的に認められたと言えます。

最新のがん治療 がん免疫療法

​がん細胞が増える仕組みと解決策

正常細胞が遺伝子をコピーして分裂増殖する際に、様々な遺伝子変異を生じて発生した異常細胞(以下では広義でがん細胞と呼びます)は免疫細胞によって除去され続けています。しかしそのうち免疫細胞からの攻撃をかわす遺伝子変異を獲得したがん細胞が発生し、それが増殖して集塊を形成します。この細胞は更なる遺伝子変異によってがん原発巣から離れた部位での免疫機構をも制御し始め、様々な臓器に転移巣を生じるようになると考えられます。

最新のがん治療 がん免疫療法

がん細胞は健常者でも毎日5,000個は発生していると言われるが免疫細胞がそれらを除去し続けている。

最新のがん治療 がん免疫療法

免疫細胞に攻撃されない仕組みを獲得したがん細胞を除去できなくなる。

最新のがん治療 がん免疫療法

がん細胞は増殖し続け原発そうができ、遠方の免疫細胞も抑制する仕組みも獲得すると転移巣が生じる。

​がん免疫活性化の鍵は樹状細胞にある

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​リンパ球に攻撃すべきターゲットの指示を出す細胞を抗原提示細胞と言い、その中最も強力な抗原提示能を有するのが樹状細胞です。未成熟Tリンパ球を成熟Tリンパ球に変化させ、がん細胞に特化した攻撃命令を出すことができるのが樹状細胞だけです。従って樹状細胞はがん特異的免疫反応の鍵です。

がん免疫療法 樹状細胞

​樹状細胞はがん細胞のみ持つがん抗原を取り込むとそのがん抗原をリンパ球に受け渡し、リンパ球はそのがん抗原を目印としてがん細胞を攻撃します。樹状細胞は血液中を巡回しながらがん細胞を接近してがん抗原を認識しようとします。ところが、がん細胞が樹状細胞の働きを抑制し、またがん抗原を認識できないようにすることでTリンパ球に攻撃命令が出ないようにしてしまいます。このことががん細胞に対して免疫反応が起きない一つの原因なのです。

正常な樹状細胞の動き

がん免疫療法 樹状細胞

​01

​樹状細胞ががん細胞を認識し、

​がんの目印を手に入れます。

がん免疫療法 樹状細胞

​02

​樹状細胞が​がんの目印を

兵隊役のリンパ球に伝えます。

がん免疫療法 樹状細胞

​03

がんの目印が教えられたリンパ球は

がん細胞を攻撃します。

再発予防の観点からも免疫力の強化が必要不可欠

​抗がん剤や放射線治療によりがんが縮小した場合でも免疫が低下している状態では生き残ったがん細胞が増殖し再発する可能性が高くなります。長期的な予後をみた時に進行がんであっても樹状細胞などのがん免疫療法を併用した場合としなかった場合では大きな差が出ます。

図に示したのは進行性非小細胞肺がんにおけるがん免疫療法の影響を調べた二重盲検試験による治験第Ⅲ相の結果ですが、がん免疫療法の併用により全生存期間は2倍弱に上昇しています(5年生存率で併用ありは81.4%、併用なしは48.3%)。同様にオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤の使用によって免疫が上手くがん細胞を攻撃してくれるようになると長期的な予後が明らかに改善することが世界的に知られています。

いずれの場合もがん特異的免疫反応が十分に得られていることが長期生存率の改善に必要であり、がん治療のみならずがん再発予防の観点からも免疫力の強化は必要不可欠と言えます。

がん免疫療法 肺がん