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​論文研究実績

-銀座鳳凰クリニックの論文発表実績-

​研究者紹介

院 長 永 井 恒 志

医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。

平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。

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当院は院長永井を始め、より患者様にご期待いただける治療法を提供できるように日々研鑽しております。

当院の論文一部のご紹介

​論文①

69 歳の末期肺癌患者に対するカルボプラチンとパクリタキセルの併用化学療法が終了した 後、急速に増悪した肺癌に対して WT1 樹状細胞療法(WT1-DC)が実施された。WT1-DC が開始されると免疫プロファイルの急速な改善が観察されたが、血中 CEA 濃度は増加した。 そこで WT1-DC 期間中にドセタキセルとラムシルマブが第二次治療として開始された。 同剤が実施されても免疫プロファイルの改善は継続し続け、同時に癌が有意に縮小した。患者の無増悪生存期間は 577 日に達しており、現在もパフォーマンスステータス 1 で通常の 日常生活を送ることができている。この症例は WT1-DC が抗腫瘍免疫を改善する作用を有すると共に、化学療法の併用によってもその効果を維持しうることを示している。

論文​②

転移巣を伴う進行性肺腺癌において、現在の標準治療では手術と放射線治療による積極的 癌治療は原則的には行っていない。そのため化学療法が継続不可となった場合は緩和ケア に切り替えられるのが一般的である。60 歳代の肺腺癌 StageIVの患者は化学療法を受けて いたが、副作用が強く中止する必要があった。標準治療の適応は無くなるため、WT1 樹状 細胞ワクチン療法と放射線治療を併用した放射線免疫療法を受けた。その結果、巨大な肺癌 は著しく縮小し、血液学的にも免疫プロファイルの改善を認めた。肺癌の増殖は抑制され、 症状も全くない。放射線免疫療法の終了後も健常者と変わらない生活を継続している。この 症例は、放射線免疫療法は標準治療の適応が無い患者においても積極的治療として有用で あることを示唆している。

​論文③

抗腫瘍免疫が癌における長期生存因子として極めて重要であることは周知の事実である。WT1樹状細胞ワクチン療法(WT1-DC)は免疫細胞治療の一つで、癌共通抗原WT1をターゲットとした腫瘍特異的免疫治療として様々な癌に対して実施されている。

化学療法を行っており、身体条件の類似した遠隔転移のあるStage4の肺癌と膵癌、それぞれ3名に対してWT1樹状細胞ワクチンを7回実施し、その免疫応答をdelayed type hypersensitivity(DTH)と、血中好中球割合、リンパ球割合、N/L比などの血液学的検査データによるimmune profile status (IPS)を用いて評価した。

肺癌ではDC投与を重ねることでDTHが増大し、それと共にIPSが改善したが、膵癌ではDTHは増大せず、IPSは5回目接種から悪化した。またDC投与後に肺癌では37℃台の発熱を認めたが、膵癌では認めなかった。これらの結果から、DTHとIPSは動態が相関しており、DTHは抗腫瘍免疫の状態を示す良い指標となると考えられた。まとめると、IPSは進行癌の予後規定因子であるから、WT1-DCの接種によるDTHの大きさは患者の予後を推定する指標となる。

DTHは極めて簡便な検査法であるが、その臨床的意義についてはこれまで十分な検討がされてこなかった。本研究はWT1-DCによる癌治療におけるDTHの重要性について明らかにすると共にDTH測定法の統一化を提言した。

論文​④

分娩6ヶ月後に突然生じた腹水貯留を契機として、両側卵巣癌、腹膜播種、多発性肝・肺転移であることが判明した。化学療法が開始されたが、予後不良と判断されたため、免疫細胞療法が併用された。WT1樹状細胞ワクチン療法と高活性化ナチュラルキラー(NK)細胞療法、およびニボルマブ点滴を複数サイクル行ったところ、腹水が消失し、全身の多発癌が顕著に縮小した。さらに、免疫細胞投与による反応生発熱以外の副作用はなく、患者の体へのダメージも認められなかった。この症例は、化学療法と免疫療法の併用効果だけでなく、各種の免疫細胞療法を併用することで、予後が極めて不良で標準治療の選択肢が少ない患者に有益な臨床効果が得られる可能性を示唆している。

​論文⑤

子宮頸癌の中で小細胞未分化癌はまれである。進行が速く予後は極めて不良である。ステージⅣの子宮頸部小細胞未分化癌に対するシスプラチンベースの化学療法施行中に、患者に薬剤耐性が生じ、標準治療はもはや不可能となった。そこで、抗がん剤免疫を活性化するために免疫放射線療法が行われた。驚いたことに、抗がん剤感受性が回復し、シスプラチンが再び奏功し、がんが消失した。さらに、がん特異的免疫の活性化により、がんの消失が維持された。免疫放射線療法は抗がん免疫力を高めるだけでなく、抗がん剤耐性の克服にも貢献する可能性があることに注目すべきである。

論文​⑥

Hisashi Nagai, Hao Chen, Ryusuke Karube, Yusuke Koitabashi, Ouka Numata, Kenichi Yamahara

手術や放射線療法、化学療法が効かなくなった末期がん患者に対する治療法は確立されておらず、世界的には緩和ケアが標準となっている。われわれは、化学療法が無効で余命2ヵ月と診断された末期小腸がん患者(40歳男性)に対し、疼痛緩和を目的とした強度変調放射線治療を行った。その後、WT1(Wilm's tumor 1)とα-ガラクトシルセラミド抗原を認識する樹状細胞ワクチンを7回投与した結果、癌は著明に縮小し、全身状態も著明に改善した。放射線治療と樹状細胞ワクチン療法の併用療法は、化学療法抵抗性の末期がん患者においても、がんの進行を抑制し、生存期間を延長する可能性がある。特に、WT1とα-ガラクトシルセラミドパルス樹状細胞との二重樹状細胞ワクチン療法は、それぞれの単剤療法よりも優れた抗腫瘍免疫効果をもたらす可能性がある。

​論文⑦

C型肝炎ウイルス感染の既往歴がある61歳の男性が、腹部膨満と著明な腹水で入院した。リンパ節、肺、骨への多発転移を特徴とするステージIVBの肝細胞癌(HCC)と診断された。WT1およびα-ガラクトシルセラミドを標的とする樹状細胞療法、ナチュラルキラー細胞、ニボルマブを含む複合免疫療法を受けた後、患者は肝細胞がんと肝予備機能に有意な改善を示し、標準治療に従った。免疫複合療法は、進行肝細胞がんで肝予備機能が乏しい患者、特に比較的若い患者にとって、重要な選択肢となる可能性がある。

論文​⑧

癌性悪液質は癌患者の半数以上が罹患し、生存率を低下させる。治療を最適化するためには、エビデンスに基づいたアプローチが早急に必要である。

癌性悪液質に対するさまざまな薬物療法の有効性と安全性を評価するために、系統的レビューとネットワークメタ解析を実施した。3つのデータベース(PubMed、Cochrane Library、Web of Science)を2000年1月1日から2024年3月20日までの期間で検索した。プール効果の算出にはRソフトウェアのnetmetaパッケージを用い、ランダム効果モデルを採用した。

1421人の患者を含む7つのプラセボ対照ランダム化試験が解析された。ペアワイズ解析の結果、体重増加はオランザピンで4.6kg(95%信頼区間[CI]0.83-8.37kg)、エスピンドロール(20mg)で3.82kg(95%CI 0.73-6.91kg)、アナモレリン(100mg)で2.36kg(95%CI 1.84-2.89kg)、アナモレリン(50mg)で1.31kg(95%CI 0.42-2.19kg)であった。安全性プロファイルに関しては、オランザピンがプラセボと比較してオッズ比0.26(95%CI 0.07-0.94)と最も低く、アナモレリン(50mg)0.86(95%CI 0.30-2.48)、アナモレリン(100mg)0.89(95%CI 0.42-1.88)と続いた。しかしながら、ネットワークメタ解析では、有効性および安全性の点でアナモレリンに対するオランザピンの優越性は確認できなかった。

オランザピンおよびアナモレリンはいずれもがん悪液質患者の体重改善に有用である。異なる患者に対しては個別化が有用であろう。

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