WT1樹状細胞ワクチン療法
-樹状細胞ワクチン療法はがん免疫療法の大黒柱として期待されています-
WT1樹状細胞ワクチン療法とは
樹状細胞の元となる単球を採血により患者さまの血液より取り出し、専門の細胞培養室で樹状細胞へと成熟させ機能を活性化した後、さらに人工的に作ったがん抗原である「WT1」を認識させます。
それをワクチンとして皮内接種すると、活性化した樹状細胞がキラーT細胞などに働きかけて、がんを集中攻撃させます。これをWT1樹状細胞ワクチン療法といいます。
WT1樹状細胞ワクチン療法の流れ
01 ─ 単球を患者様の血液から採取
02 ─ 樹状細胞にがん抗原WT1を与える
03 ─ WT1樹状細胞ワクチンとして注射
04 ─ 樹状細胞ががん細胞を攻撃する指示
05 ─ リンパ球ががん細胞を狙って攻撃
01 単球を患者様の血液から採取
樹状細胞の元となる単球を患者様の血液から採取し、細胞加工施設で人工的に樹状細胞に成長させる。
02 樹状細胞にがん抗原WT1を与える
樹状細胞に人工的に作られたがんの目印であるWT1を与えます。WT1を手に入れた樹状細胞はリンパ球にWT1を教えることができる一人前の司令塔になります。
03 WT1樹状細胞ワクチンとして注射
司令塔に育ったたくさんの樹状細胞を「WT1樹状細胞ワクチン」として注射します。
04 樹状細胞ががん細胞を攻撃する指示
体に入った樹状細胞は免疫の司令塔としてリンパ球にWT1を教え、がん細胞を攻撃するように指導します。
05 リンパ球ががん細胞を狙って攻撃
WT1を覚えたリンパ球が体中を巡ってWT1を発現しているがん細胞を狙って攻撃します。
成分採血が困難な場合
WT1樹状細胞ワクチンを作製するにあたり、まず特殊な採血(成分採血)を行います。患者様によっては成分採血が困難な場合もあるため、その際はペプチド感作樹状細胞ワクチン療法(単回採血)を行います。
ペプチド感作樹状細胞ワクチン療法(単回採血)は、患者さんの血液から採取した単核球を細胞培養施設で樹状細胞に分化成熟させる際に、人工癌抗原ペプチドを認識させて、抗原特異的な樹状細胞ワクチンを作成する方法です。
副作用とリスク
患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、発熱・発疹等が見られる場合がありますが、それ以外の重篤な副作用は見 られず、身体への負担がほとんどありません。
WT1樹状細胞ワクチン療法の強み
・世界で最も優れたがん抗原であるWT1を使用している
・弱った単球を成熟した樹状細胞に育てる培養技術を用いている
世界で最も優れたがん抗原であるWT1を使用している
大阪大学の杉山治夫特任教授が発見したWT1(Wilms Tumor 1)は多くのがんに共通して高い確率で発現しているがん抗原です※1。
また2009年にNCI(National Cancer Institute, アメリカ国立がん研究所)は、免疫療法の標的となりうる世界の代表的な75種のがん抗原のうちWT1をもっとも有用性のある抗原と評価しました※2。
いかに多くの癌に発現しているか、いかに多くのがん患者様に発現しているか、そしていかに免疫細胞が攻撃ターゲット としやすいか、しっかりした臨床効果を得るためにはWT1が最も優れています。
WT1はほとんどのがんに発現している
がん抗原としてWT1が最も優れている
弱った単球を成熟した樹状細胞に育てる培養技術を用いている
樹状細胞ワクチン療法は、患者様の細胞を一度体外に取り出し、人工的に培養してから再度体内に戻します。
細胞は生物なので、採血、運搬、細胞培養、ワクチン製剤化の全ての工程を慎重に行わなければ、優れた樹状細胞ワクチンを作ることはできません。
そのため、医療機関の細胞加工施設(Cell Processing Center : CPC)と呼ばれる無菌状態で温度、湿度などが徹底管理された施設で作製されます。
CPCでの作業は標準業務手順書(Standard Operating Procedure : SOP)に従い、訓練を積んだ培養士により厳格に行われ、品質が管理されています。
WT1樹状細胞ワクチン療法の効果
WT1樹状細胞ワクチン療法を実施した症例における疾患制御率(がんの消失、縮小、増大停止)は69.1%に達するとの報告がありますが、この数値はあくまで参考値です。
しかし、がんの中でも特に悪性度が高い膵がんの末期であっても、WT1を樹状細胞が認識し、免疫反応が十分に得られれば有意に生存率は改善します。
これらの結果は末期がんであってもWT1樹状細胞ワクチン療法を行う価値があることを示しています。