免疫チェックポイント阻害剤（阻害薬）
免疫チェックポイント阻害剤とは
私たちの体には、「自己」と「非自己」を区別し、異物を排除する「免疫」というしくみが備わっています。この免疫細胞は、本来がん細胞も異物として攻撃するはずですが、一部のがん細胞は「免疫チェックポイント」というブレーキ機構を利用して、免疫細胞の攻撃から逃れています。
免疫チェックポイント阻害剤は、このがん細胞がかけているブレーキを解除し、免疫細胞の攻撃力を回復させる薬剤です。主に「PD-1阻害剤」「PD-L1阻害剤」「CTLA-4阻害剤」といった種類があります。
PD-1は活性化リンパ球の細胞膜表面に発現する蛋白質であることを京都大学の本庶佑教授らが発見し、2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞につながったことは記憶に新しいかと思います。
免疫チェックポイント阻害薬の種類
PD-1阻害薬にはニボルマブ（商品名オプジーボ®）やペムブロリズマブ（商品名キイトルーダ®）、CTLA4阻害薬にはイピリムマブ（商品名ヤーボイ®）などがあり、既に特定のがんにおいて保険が適用されています。
しかしながら免疫チェックポイント阻害剤単剤での奏効率は20〜30％程度に留まっており、それだけでの治療では不十分なことが分かっています。その理由はまだ明らかにはなっていませんが、がん細胞はがんの病巣局所での免疫抑制だけでなく、全身的な免疫機構に対しても抑制作用を及ぼしている可能性も一つの理由として挙げられます。
がんの患者様は病原性微生物による感染症を発症しやすく、また感染症が重症化しやすいのも全身性の免疫抑制が生じていることが原因であると考えられます。
また、全身的な免疫抑制作用によってがん細胞が容易に転移できるようになると考えると、全身諸臓器への多発転移を合理的に説明できます。
がん抗原を認識して攻撃を指揮する樹状細胞から、がん細胞に直接攻撃をしかける細胞障害性T細胞までの、一連の免疫機構が抑制されている状態であれば、免疫チェックポイント阻害剤のみでは十分な抗がん作用が得られないとしても不思議ではありません。
オプジーボの仕組みと効果
オプジーボは、PD-1タンパク質の働きを阻害する代表的な免疫チェックポイント阻害剤です。PD-1は免疫細胞の表面に存在し、がん細胞と結合すると免疫細胞の活性が抑制されます。
オプジーボはこの結合を阻止することで、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫など、多くのがん種に効果が認められています。
免疫チェックポイント阻害剤と抗がん剤の違い
従来の抗がん剤（化学療法）はがん細胞を直接攻撃して増殖を抑制しますが、正常細胞にも影響するため、吐き気や脱毛などの副作用が現れやすいです。
一方、免疫チェックポイント阻害剤は免疫系を活性化させてがん細胞を攻撃する方法をとるため、細胞への直接的な攻撃による副作用は少ないとされています。ただし、免疫の過剰活性化による特有の副作用があります。
免疫チェックポイント阻害剤の主な副作用：
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皮膚障害（発疹、かゆみなど）
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肺障害（間質性肺炎、咳、息切れ）
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消化器症状（下痢、腹痛）
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内分泌障害（甲状腺機能異常、1型糖尿病）
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肝・腎機能障害
これらの副作用は投与開始後2ヶ月以内に起こりやすいですが、治療終了後数ヶ月経ってから現れることもあります。体調の変化に気づいたら、早めに医療従事者に相談することが重要です。
免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の新たな選択肢として大きな期待を集めています。個々の患者さんの特性に合わせた適切な治療選択と、副作用の早期発見・対処が、治療成功の鍵となるでしょう。
当院における免疫チェックポイント阻害剤の併用療法
樹状細胞ワクチン療法は、がん患者様の弱った樹状細胞を細胞培養施設で増殖活性化し、樹状細胞が十分にエフェクター細胞（がん細胞を攻撃する免疫細胞群）に攻撃指示を出せる状態にします。その上で、十分な免疫反応が臨床的に確認されているのにも関わらず、抗がん作用が不十分であると考えられる場合には、がん病巣局所での免疫抑制が強い可能性を考慮して免疫チェックポイント阻害剤の併用療法を検討します。
ただしStage4の患者様ではほとんどの場合、抗腫瘍免疫が強く抑制されており、免疫チェックポイント阻害剤の併用が必要になります。
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