高活性化NK細胞療法
NK細胞とは
NK細胞は「ナチュラルキラー細胞」と呼ばれる免疫細胞の一種です。
NK細胞は抗原提示細胞からのプライミングを経ることなく、ウイルスに感染した細胞や癌細胞を認識すると、直接的に攻撃して細胞をアポトーシスに導きます。
NK活性とがん発生率の関係
埼玉県の40~80歳の住人3625人をNK細胞の活性度高値、中間値、低値の3群に分けて11年間追跡してみると、男女ともにNK活性の低い群で明らかに癌の発生率が高いことが分かりました(図1)。
図1
近年の学説では、癌細胞は常時発生しているものの、NK細胞などの自然免疫系が癌細胞を異物として認識し排除していると考えられています。
そのためNK細胞の機能が低下すると、癌細胞を排除できなくなり増大して臨床的な腫瘍になると考えられます。埼玉県での追跡調査はまさにそれを支持する結果です。
NK細胞が攻撃するがん細胞
正常細胞には細胞の表面にMHCクラスⅠという蛋白質が存在します。MHCクラスⅠは細胞内の物質(抗原)を外部に提示します。
老化した細胞や癌細胞は特有の抗原が外に出ており、抗原を認識した樹状細胞がその種類を元に正常細胞か異常細胞か区別しています。
そして異常細胞と認識した場合は抗原を細胞傷害性T細胞に教えて、細胞傷害性T細胞はこの抗原を目印として体内を巡回します。
異常細胞に接して抗原を認識すると、細胞傷害性T細胞はパーフォリンやグランザイムなどの蛋白質の異常細胞内に注入し、かつFasリガンドと呼ばれる細胞膜受容体への刺激などを介して、異常細胞を破壊します。
MHCクラスⅠが細胞膜に存在している癌細胞はこうした機序によって排除されます。
MHCクラスⅠを発現しないがん細胞もいる
ところが癌細胞の中には、MHCクラスⅠを発現していないものもいます。この癌細胞は樹状細胞や細胞傷害性T細胞に認識されないので生き残ります。
その対策としてMHCクラスⅠが無い癌細胞をターゲットとして攻撃するNK細胞が存在します。
NK細胞はMHCクラスⅠが無い細胞だけを攻撃するように特化されています。したがってNK細胞の機能が低下している人ではこのタイプの癌細胞が生き残りやすいのです。
NK細胞を用いた新しい癌治療
また、最近の臨床研究によっていくつかの分子標的薬(ハーセプチン、パージェタ、リツキサンなど)とNK細胞は抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity; ADCC)というメカニズムを介して癌細胞を破壊することが分かりました。
このメカニズムはNK細胞が直接的に癌細胞を認識することができなくても、分子標的薬を介して認識することができます(図2)。
図2
これらのことは化学療法と免疫細胞療法の併用が相乗効果を生む一例として注目され、新しい癌治療戦略として研究が進んでます。
NK細胞活性度の重要性
ここまでNK細胞と癌細胞の関係性について解説してきました。
我々の健康面で考えると、NK細胞の活性度を高い状態に維持することは癌の進行を防ぐ上で大変重要です。
NK細胞活性度は加齢で低下する
NK細胞の活性度は加齢と共に低下していくため、誰もが中年以上になると癌になりやすくなります。
若くても風邪をひきやすいなどNK細胞活性が低いと思われる人や中高年の方はNK細胞活性を高い状態に維持するための治療が必要です(図3)。
図3
出展:Front Immunol 2018;9:591.doi:10.3389/fimmu.2018.00591.より引用改変(E/T=100:1の結果を抽出)
がん予防としてのNK細胞治療
NK細胞治療はがん予防として実施することが厚生労働省の許可によって可能になっています。定期的に高活性NK細胞を補充することで活性度を上げ、発生しつつある癌細胞を排除することがお勧めです。
※現在がん患者様以外のNK細胞治療の新規予約を中止しております(4/15時点)。最新情報につきましては、お手数ですがお問い合わせをお願いいたします。
がん治療としてのNK細胞治療
癌患者さんにおいては高活性NK細胞を補充することが治療となります。
癌が進行している患者さんではNK細胞機能が低下していることが多いので、他の癌治療と並行してNK細胞治療も受けることが理想的です。
【注意点】免疫チェックポイント阻害剤と併用ができない
オプジーボやヤーボイなどの免疫 チェックポイント阻害剤を保険診療で受けている方はNK細胞治療を一緒に行うことはできません。
免疫チェックポイント阻害剤は癌が免疫から身を守るための蛋白スイッチをオフにする作用を持っています。
これは正常細胞に対しても同様に働くため、NK細胞が誤って正常細胞を攻撃してしまう可能性が高くなるからです。
<がんリスクが高い方に>スーパー高活性化NK細胞療法
長期間にわたり培養を継続するとNK細胞の質が下がってしまうため、NK細胞の培養期間は2週間が一般的です。しかし当院ではNK細胞を3週間培養することのできる技術を独自に開発しました。
その結果、従来の5倍に増やすだけでなく、NK細胞の純度や活性をさらに上昇させ、より高い品質のNK細胞を提供することに成功しました。
がん 患者様、または、がんリスクの高い方に対しては、3週間培養のスーパー高活性化NK細胞療法をぜひおすすめします。
高活性化NK細胞療法の費用
当院の高活性化NK細胞療法の費用を以下に記載しています。
高活性化NK細胞療法
352,000円(税込)
スーパー高活性化NK細胞療法
451,000円(税込)
※当院は自由診療のため、全額自己負担となります。
※外国籍の方は別料金となります。
当院では患者さまのご状態によってさまざまな免疫細胞治療をご提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。
高活性化NK細胞療法の副作用・リスク
免疫細胞治療は患者さん自身の免疫細胞を治療に用いるので、発熱・発疹等が見られます。しかし、それ以外の重篤な副作用は見られず、身体への負担がほとんどありません。
※スーパー高活性化NK細胞療法も同様。
他の免疫療法について知る
当院では患者さまのご状態によってさまざまな免疫細胞治療をご提供しています。