がんの治療法がないと言われたら|希望をつなぐ選択肢
- 院長 永井 恒志
- 4月28日
- 読了時間: 4分

「これ以上、できる治療はありません」
医師からそう言われたとき、患者さんやご家族は深い絶望に包まれることがあります。でも、本当に「もう何もできない」のでしょうか?
結論から言えば――答えはNOです。
たとえ標準治療が尽きたとしても、心と体を支える方法、希望をつなぐ選択肢はまだ残されています。
本記事では、がんの「治療法がない」と言われたときにこそ考えたいこと、できることを丁寧にご紹介します。

がんの「治療法がない」とはどういう意味か?
医師が「治療法がない」と伝えるとき、それは以下のような状況を指していることがあります。
がんが手術できない状態に進行している
抗がん剤や放射線治療の効果が期待できない
全身状態が悪く、治療に耐えられない
標準治療(ガイドラインに基づいた治療)が尽きた
つまり、「いま医学的に確立された“根治治療”がもう難しい」ということであり、「すべてをあきらめてください」という意味ではありません。
治療法がない=すべてを諦めるべきではない
実際には、以下のような選択肢が今でも可能です。
セカンドオピニオンを受けてみる
医師の判断が正しいか、自分の理解が合っているかを確認するためにも、別の医療機関や専門医に意見を求める“セカンドオピニオン”は非常に有効です。
がん専門病院では、異なる治療戦略や治験の紹介があることも
特定のがんに強い専門家で、新しい治療法を知っている可能性も
セカンドオピニオンは「迷いや希望を整理する行為」として、多くの方が利用しています。
臨床試験(治験)への参加
標準治療が効かない方を対象とした、新薬や先進治療の試験が数多く行われています。
新しい免疫療法、分子標的薬、ウイルス療法などが対象
希望すれば全国のがんセンターや大学病院の治験を紹介してもらえることも
「最後のチャンス」ではなく、「次の一歩」として前向きに検討する価値があります。
自由診療の免疫療法・代替療法
保険外で行われている医療の中には、標準治療の後に用いられることを想定した免疫細胞療法、樹状細胞ワクチン療法、温熱療法などがあります。
効果は個人差があり、費用もかかりますが、身体への負担が比較的少ない治療法もあります
導入にあたっては、医学的根拠のある施設を選ぶことが大切
「標準治療と並列ではなく、補完・延命・QOL向上の手段」として考えましょう。
緩和ケアというもう一つの“積極的な治療”
「治療がない」と言われたとき、多くの方が「緩和ケア=何もせず、ただ待つだけ」と誤解します。
しかし実際は、緩和ケアこそが“今をよりよく生きるための医療”です。
痛み、吐き気、呼吸苦、不安、眠れない――そんなつらさを和らげる
家族との時間を大切にするサポートをしてくれる
終末期だけでなく、治療中でも併用できるのが現代の考え方
「最期まで自分らしく生きる」ことを支える、“もうひとつの医療”として再評価されています。
心が折れそうなとき、支えてくれる人がいます
治療法がなくても、「支える医療」はなくなりません。がんと向き合うあなたのために、多くの支援があります:
緩和ケア医・がん看護専門看護師
臨床心理士・がん相談支援センター
医療ソーシャルワーカー
がん経験者によるピアサポート
ひとりで抱え込まず、「話していい」「頼っていい」――それもまた、大切な“生きる力”です。
まとめ:「治療法がない」からこそ、自分らしい生き方を選ぶ
「治療法がない」と言われたとき、それは「命のカウントダウン」ではなく、「生き方を見つめ直す時間のはじまり」かもしれません。
今できることは、
他の可能性を探してみる(セカンドオピニオン、治験)
心と体を整える治療(緩和ケア)
自分らしい生き方を考える(家族との時間、好きなことをする)
あなたには、まだできることがたくさんあります。その“選択する力”を支えるために、医療者も、社会も、そばにいます。