多発肺転移とは?― がんが肺に広がるときの意味と治療法
- 院長 永井 恒志

- 10月21日
- 読了時間: 5分

がんは原発巣から血液やリンパを介して他の臓器に広がることがあります。その中でも 肺転移 は非常に多く見られる転移先のひとつです。特に「多発肺転移」となると、画像検査で肺に複数の小さな影が散らばるように映り、患者様やご家族に大きな不安を与えます。
今回は、多発肺転移とは何か、その特徴や治療の考え方についてわかりやすく解説します。
多発肺転移とは何か?
がん細胞が原発巣(胃・大腸・乳腺・腎臓など)から血流に乗って肺に到達し、複数の病変を形成する状態を指します。「孤立性肺転移(1個)」に比べて手術での切除は難しく、全身治療が中心になり、しばしば「がんが進行しているサイン」として扱われます。
どのがんから起こりやすいのか
多発肺転移を起こしやすいがんとしては、
大腸がん
腎がん
乳がん
子宮がん・卵巣がん
肉腫(骨肉腫、軟部肉腫など)
特に大腸がんと腎がんは肺転移の頻度が高いことが知られています。
多発肺転移の症状と発見のきっかけ

肺転移は小さいうちは自覚症状がなく、定期検査のCTで見つかることが多いです。
進行すると
咳や痰
血痰
息切れ、胸痛
などが出ることもありますが、症状が出たときにはかなり進行している場合が多いです。
多発肺転移の診断と画像所見の特徴
CT画像では、両側の肺に小さな結節が散在するように見えることが典型的です。
大きさは数mm〜数cmまでさまざま
丸い形の「coin lesion」と呼ばれる陰影が複数
PET-CTで集積を確認し、原発巣や他の転移も調べる
必要に応じて気管支鏡やCTガイド下生検で組織を取り、転移かどうかを確定診断します。
・気管支鏡:口や鼻から細いカメラ(内視鏡)を気管支の中に入れ、肺の奥を直接観察したり組織の一部を採取して調べる検査。全身を切らずに病変を確認できるのが特徴。 ・CTガイド下生検:CT画像で場所を確認しながら、胸の外側から細い針を肺の病変に刺して組織を採取する方法。気管支鏡では届かない深い部位や小さな結節も検査可能。 |
多発肺転移の治療法
多発肺転移では「外科手術で全て切除」は難しいため、全身治療が中心です。
化学療法(抗がん剤)
原発巣に準じた標準治療が基本です。
分子標的薬
例:大腸がんでは抗EGFR抗体、腎がんではチロシンキナーゼ阻害薬など。
免疫チェックポイント阻害剤
特に腎がん・悪性黒色腫では有効性が示されています。
当院の治療:免疫チェックポイント阻害剤
局所療法(補助的)
・放射線治療(定位照射など)
・ラジオ波焼灼術(RFA)
→ 小さな病変や症状のある部分に対して使用されることがあります。
外科手術
極めて限られたケース(ごく少数の病変で、原発巣がコントロールされている場合)にのみ検討されます。
まとめ:多発肺転移とどう向き合うか
多発肺転移は「がんが全身に広がり始めている」ことを意味し、基本は全身治療が主体となります。
画像では小さな影が散らばるように見えるのが特徴
症状が出る前に定期検査で発見されることが多い
抗がん剤・分子標的薬・免疫療法が治療の中心
限られた場合に放射線や手術が追加される
多発肺転移と診断されるとショックが大きいですが、「もう治療ができない」という意味ではありません。近年は免疫療法や新規分子標的薬の登場により、長期生存や病状の安定が期待できるケースも増えてきています。
当院はがん免疫療法専門のクリニックです。
銀座鳳凰クリニックは、「患者様の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。
主な治療法としては、
など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。
※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。
さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。
銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。
標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。
-がん治療・免疫療法について-

■記事を書いた人
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。





