扁平上皮がんとは? 〜上皮に発生する代表的ながんの特徴と治療法〜
- 院長 永井 恒志
- 5月9日
- 読了時間: 4分

「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」という言葉を初めて聞いた方は、「それはどこにできるがんなのか?」「治るのか?」「ほかのがんと何が違うのか?」と戸惑うかもしれません。
実は扁平上皮がんは、人の体の“さまざまな場所”にできるがんであり、皮膚や粘膜の表面を覆う「扁平上皮」という細胞から発生することからこの名前が付けられています。
この記事では、扁平上皮がんの共通する特徴や主な発生部位ごとの症状・治療・予後について、丁寧にご紹介します。

扁平上皮とは?どこにある細胞?
「扁平上皮」は、皮膚や口の中、のど、食道、子宮頸部など、体の表面や粘膜を覆っている薄い細胞層です。
この扁平上皮から発生するがんを、まとめて「扁平上皮がん」と呼びます。
つまり、扁平上皮がんは“1つの臓器のがん”ではなく、さまざまな部位に生じるがんの「組織型」なのです。
扁平上皮がんが発生しやすい主な部位と症状
発生部位 | 主な症状 | 備考 |
皮膚 | しこり、ただれ、出血 | 日光曝露部位にできやすい |
口腔・咽頭 | 舌や頬のしこり、口内炎、出血、嚥下困難 | 喫煙・飲酒・HPV感染がリスク因子 |
喉頭 | 声のかすれ、のどの異物感 | 早期発見で治療可能性が高い |
食道 | 嚥下困難、胸のつかえ、体重減少 | 進行が早いため注意が必要 |
肺(肺門型) | 咳、血痰、呼吸困難 | 喫煙との強い関連あり |
子宮頸部 | 不正出血、おりものの異常 | HPV感染が原因、ワクチンで予防可能 |
肛門 | 出血、痛み、しこり | 比較的まれな発生部位 |
このように、発生部位によって症状は異なりますが、早期には自覚症状が乏しいことも多いため、異変に気づいたら早めの受診が大切です。
共通するリスク因子
扁平上皮がんの多くは、以下のような要因と関連しています:
喫煙(肺がん、食道がん、口腔・喉頭がん)
飲酒(特に食道がんとの関連が深い)
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染(子宮頸がん、口腔がん、肛門がん)
紫外線(UV)曝露(皮膚の扁平上皮がん)
慢性炎症や傷、刺激
日常生活の中でこれらのリスクを減らすことで、発症の予防にもつながります。
扁平上皮がんの治療方法
治療は発生部位や進行度により異なりますが、共通して以下の治療法が用いられます。
手術療法
初期で局所にとどまる場合は手術での切除が最も効果的
特に皮膚、口腔、子宮頸部などでは根治が期待できる
放射線療法
喉頭がん、子宮頸がん、肺がんなどで臓器を温存しながら治療可能
手術と同等の治癒率が期待できるケースも
化学療法(抗がん剤)
進行例や転移がある場合には全身治療として使用
シスプラチン、5-FUなどが代表薬剤
手術や放射線と併用する「術前・術後補助療法」も
免疫チェックポイント阻害剤
食道がん、肺がん、頭頸部がんなどで使用実績あり
ニボルマブ(オプジーボ)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)などが使用される
扁平上皮がんの予後(生存率)
部位によって予後は異なりますが、早期に見つけて治療できれば高い治癒率が期待できます。
発生部位 | ステージ別5年生存率(概算) |
子宮頸がん(ステージⅠ) | 約90%以上 |
喉頭がん(早期) | 約80〜90% |
食道がん(ステージⅣ) | 約15〜25% |
肺扁平上皮がん(ステージⅠ) | 約70% |
早期発見・早期治療がカギとなるがんであり、定期検診や異変への早期対応が重要です。
まとめ:扁平上皮がんは“早く見つけて治せるがん”
扁平上皮がんは、発生部位によって治療法や予後に差がありますが、共通して言えるのは“早く見つければ治療できる可能性が高い”ということです。
喫煙や飲酒、HPV感染などのリスクを減らすことも予防に直結します。
そして、のどの違和感や血痰、声のかすれ、不正出血などのサインを軽視せず、「おかしいな」と感じたらすぐに受診する勇気が、命を守る第一歩になります。
-がん治療・免疫療法について-
おすすめのコラム