がんの治療方法 〜自分に合った治療法を選ぶために〜
- 院長 永井 恒志
- 4月30日
- 読了時間: 5分
更新日:4月30日

がんと診断されたとき、多くの方が最初に考えるのが「どんな治療を受けるべきか?」ということです。治療の選択は、がんの種類や進行度、年齢や体調、生活の価値観によって大きく異なります。
この記事では、現代のがん治療において用いられている代表的な治療法の種類と特徴を、できるだけわかりやすく解説します。

がん治療の3本柱:「手術」「抗がん剤」「放射線」
まず基本として、多くのがんに共通して使われる治療には以下の3つがあります。
① 手術(外科治療)
がんのある臓器や組織を物理的に取り除く方法です。
早期がんに最も効果的
根治(完治)を目指せる可能性が高い
ただし、がんが広がっている場合や全身に転移している場合は適応外となることもあります。
最近では腹腔鏡手術やロボット支援手術など、身体への負担を軽減する技術も進んでいます。
② 抗がん剤(化学療法)
薬剤を用いてがん細胞の増殖を抑える治療です。
全身に薬が行き渡るため、転移があるがんにも対応できます
点滴・内服・注射など、治療法の種類が多い
副作用(脱毛・吐き気・白血球低下など)が出ることがありますが、近年は対策薬も進んでいます
③ 放射線治療
がんに放射線を集中照射し、がん細胞を破壊する治療です。
手術が難しい場所(脳・喉・肺など)でも治療が可能
近年はピンポイントでがんだけを狙う技術(IMRT、粒子線など)が進化
副作用は照射部位によって異なりますが、手術より負担は少ない傾向があります
進化する治療④ 免疫療法
近年、急速に広がっているのが「免疫療法」です。これは、患者自身の免疫細胞にがんと戦う力を与える治療です。
代表例:免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ、キイトルーダなど)
対象がん:肺がん、皮膚がん、胃がん、腎がん、膀胱がんなど
効果:一部の患者で長期生存・再発抑制が見られる
注意点:すべてのがんに効くわけではない(効果が出る人を見極める“バイオマーカー”が重要)
さらに、樹状細胞ワクチン療法、NK細胞療法、CAR-T療法など、細胞レベルで免疫を調整する治療も研究・臨床応用が進んでいます。
<当院の治療>
関連ページ
分子標的薬・ホルモン療法:特定のがんに効果的
がんの「弱点」を狙う治療法もあります。
分子標的薬
がん細胞だけが持つ特定の異常(遺伝子変異など)をピンポイントで狙い撃ちする薬です。
例:HER2陽性乳がんに対するハーセプチン、EGFR変異肺がんに対するイレッサ
副作用が抗がん剤より少なく、より個別化された治療が可能になっています。
ホルモン療法
ホルモンが関与するがん(乳がん、前立腺がんなど)では、ホルモンの働きを抑えることでがんの進行を防ぐことができます。
飲み薬や注射で長期にコントロールできる
高齢者でも取り入れやすい治療
緩和ケアと併用する治療の考え方
がんが進行して手術や積極的治療が難しい場合、「緩和ケア」を中心とした治療方針が検討されます。
緩和ケアは、がんの治療を諦めるという意味ではありません。痛みや呼吸苦などの症状を和らげ、“その人らしく生きること”を支える医療です。
近年では、緩和ケアを受けながら免疫治療などを継続するケースもあり、延命効果や生活の質(QOL)の維持が期待されています。
関連コラム
治療法は「組み合わせ」で選ぶ時代へ
実際の治療では、複数の方法を組み合わせて行うことが多くなっています。
例:
手術+抗がん剤(術後再発予防)
放射線+免疫療法(アブスコパル効果を狙う)
抗がん剤+分子標的薬(相乗効果を得る)
がんとの闘いは、「1つの武器」で挑む時代から、「多角的に攻める戦略型治療」の時代へと変化しています。
関連コラム
まとめ:治療選択は“人生観”とも深く関わる
がんの治療法には数多くの選択肢があり、患者さんごとに最適な組み合わせは異なります。
「がんを完全に取り除きたい」 「できるだけ苦しまずに過ごしたい」 「家族とできるだけ長く一緒にいたい」 ── その思いの数だけ、治療のかたちがあります。
だからこそ、医師と十分に話し合い、自分にとって納得できる道を選ぶことがとても大切です。どんな治療法も、あなたの命と人生を支えるための“選択肢のひとつ”です。
-がん治療の選択肢を探している方-