子宮がん ステージ4〜余命・生存率・治療と向き合うために〜
- 院長 永井 恒志
- 7月23日
- 読了時間: 8分

「ステージ4の子宮がん」と聞くと、多くの患者さんやご家族が「もう治療法がないのではないか」「余命はどのくらいだろう」と、不安な気持ちでいっぱいになるかもしれません。
しかし、ステージ4であっても、がんとともに生活しながら、治療を続けている方はたくさんいます。
本記事では、子宮がんのステージ4とは何か、生存率や余命の考え方、治療法、そして今できることについて、前向きに分かりやすく解説します

■記事を書いた人
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
子宮がんとは?2種類のがんがある
「子宮がん」とは、女性の子宮にできるがんの総称ですが、実は「子宮頸がん」と「子宮体がん」と大きく2つのタイプに分かれます。
子宮頸がんとは

子宮の入り口(頸部)にできるがん
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因
若い女性にも発症しやすく、早期発見で完治可能
子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉により皮膚や粘膜の接触を通じて感染し、性交経験のある女性の約80%が一生に一度は感染すると報告されています。
感染から発症までは数年から数十年を要し、前がん病変である異形成を経てがん化します。
子宮体がん(子宮内膜がん)とは

子宮の奥にある内膜に発生
閉経後の女性に多く、女性ホルモン(エストロゲン)の影響が関与
子宮体がんは主に子宮内膜から発生するため、子宮内膜がんとも呼ばれています。
女性の体には「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンがあります。エストロゲンは、子宮内膜を厚くして妊娠の準備をする働きがある一方で、プロゲステロンは、厚くなった子宮内膜が増えすぎないよう抑制する役割があります。
通常はこの2つのホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のバランスがとれているので、子宮内膜は必要以上に厚くなりません。
しかし、プロゲステロンがうまく働かず、エストロゲンの影響だけが続くと、子宮内膜がどんどん増えてしまいます。
この状態が長く続くと、細胞が異常になり、がん化する可能性が高くなります。
ステージ4 子宮がんの特徴と症状
ステージ4では、がんが骨盤外や他の臓器(肺・肝臓・骨など)に転移している状態です。
子宮がんのステージ4は、以下のように定義されます。
ステージⅣA:がんが膀胱や直腸の粘膜に浸潤
ステージⅣB:遠隔臓器(肺、肝臓、骨など)へ転移
症状としては
不正出血(閉経後でも)
下腹部の重い痛み、腰痛
排尿・排便の違和感や痛み
むくみ(リンパ節転移による)
息切れや咳(肺転移)
などがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
子宮頸がんは初期症状が乏しく、進行すると出血や痛みなどが現れます。子宮体がんは早い段階から不正出血が出やすいがんです。
子宮頸がん ステージごとの状態と症状
子宮頸がんは、がんの広がり具合(進行度)によってステージ(病期)がⅠ期からⅣ期まで分けられます。数字が大きいほど進行しています。
※スクロールできます(スマホの場合)→
ステージ | 定義・状態 | 主な症状 |
Ⅰ期 | がんが子宮頸部の中だけにとどまっている | 初期はほとんど症状なし。不正出血(生理以外の出血)、性行為後の出血、おりものの変化などが出ることも。 |
Ⅱ期 | がんが子宮頸部を超えて広がっているが、骨盤壁や膣の下1/3までは達していない | 不正出血、腹部の違和感や圧迫感、排尿時の痛みなど。 |
Ⅲ期 | がんが骨盤の壁や膣の下1/3、リンパ節まで広がっている | 出血やおりものの増加、骨盤や下腹部の痛み、排尿・排便時の痛みや出血、むくみなど。 |
Ⅳ期 | がんが膀胱や直腸、遠くの臓器(肺や肝臓など)まで広がっている | 強い下腹部痛、排尿・排便障害、体重減少など。症状が重くなり、日常生活に支障が出る。 |
初期は自覚症状がほとんどなく、進行するほど症状が増えたり重くなったりします。代表的な症状は「不正出血」と「おりものの異常」です。
子宮体がん ステージごとの状態と症状
子宮体がんも、がんの広がり方によってステージⅠ~Ⅳに分けられます。
※スクロールできます(スマホの場合)→
ステージ | 定義・状態 | 主な症状 |
Ⅰ期 | がんが子宮体部の中だけにとどまっている | 不正出血(特に閉経後)、おりものの増加、月経の量が多くなるなど。初期から症状が出ることが多い。 |
Ⅱ期 | がんが子宮頸部まで広がっているが、子宮の外には出ていない | Ⅰ期と同様の症状に加え、下腹部の痛みや違和感が出ることも。 |
Ⅲ期 | がんが子宮の外(卵巣・卵管・膣・リンパ節など)に広がっているが、骨盤の外までは出ていない | 下腹部痛、下肢のむくみ、排尿障害、性交痛など。転移した場所によって症状が変わる。 |
Ⅳ期 | がんが膀胱や腸の粘膜、または肺や肝臓などの遠くの臓器まで広がっている | 強い下腹部痛、排尿や排便の障害、全身のだるさ、体重減少など。転移先の臓器に応じた症状も。 |
子宮体がんは、初期から「不正出血」が現れることが多いのが特徴です。進行すると、痛みや全身症状、転移先の臓器による症状が加わります。
ステージ4 子宮がんの生存率と余命
国立がん研究センターのデータによると、ステージ4子宮がんの5年相対生存率は約15~25%程度とされています。
ただし、がんの種類(頸部 or 体部)、患者の体力、転移の部位・数、治療歴などによって大きく異なります。
「余命」は医師が過去の統計や経験に基づいて伝える「目安」であり、あなた自身の人生の時間ではありません。
事実、ステージ4と診断されながらも、数年以上治療を続け、穏やかに生活されている方も少なくありません。
子宮がんステージ4でも行える治療とは?

たとえステージ4であっても、がんの進行を遅らせ、症状を和らげ、生活の質を守るための治療が数多くあります。
抗がん剤(化学療法)
シスプラチン、パクリタキセルなどが用いられる
再発や遠隔転移がある場合の基本治療
全身に効くため、複数の転移に対応可能
放射線治療
骨盤内の出血・痛み・排尿障害などの症状緩和に有効
局所制御とQOLの維持を目的に使われます
分子標的薬・免疫療法(研究段階含む)
一部の子宮体がんではMSI-HやdMMR(DNA修復異常)があると、免疫チェックポイント阻害剤(ペムブロリズマブなど)が使われることも
個別化医療に向けて、遺伝子検査の活用が広がっています
ホルモン療法(子宮体がんの一部)
エストロゲンの影響を受けるがんに対し、内服薬や注射で進行を抑える
関連:がん免疫療法とは
子宮がんステージ4の免疫療法による治療実績
当院では免疫療法による子宮がん(ステージ4)の治療実績がございます。(※以下、2025年5月28日現在)
緩和ケアと共に治療を進めるという選択
ステージ4と診断されると、「もう治療できない」「緩和ケアしかない」と誤解されることがあります。
しかし、実際には緩和ケアと治療の“併用”が現代医療の基本です。
緩和ケアは、痛みや不安、吐き気、便秘、倦怠感など、生活の中で感じる“つらさ”を和らげ、治療と両立するための支えです。
一人で抱え込まず、がん専門医、緩和ケア医、看護師、ソーシャルワーカー、心理士など多職種のチームと共に治療に向き合っていくことが、穏やかな毎日を支えます。
家族と過ごす時間、自分らしく生きる時間を支える医療
治療の目的が「完治」ではなくなっても、「生きる意味」は変わりません。
「家族と1日でも長く過ごしたい」
「痛みなく、穏やかに生活したい」
「好きな音楽や食事を楽しみたい」
その願いを叶えるための医療こそ、ステージ4における“希望の治療”です。
まとめ:ステージ4でも“できること”はたくさんある
子宮がんのステージ4――確かに厳しい状況かもしれません。 でも、あきらめる必要はありません。
医学は日々進化しており、個別化医療や免疫療法、緩和ケアとの併用など、できることは確実に増えています。
大切なのは、「もう終わり」と思うことではなく、「これからどう生きるか」を一緒に考えること。あなたの意思と医療チームの力を信じて、前に進んでいきましょう。
-がんステージ4でも諦めない-
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