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がん免疫療法を専門とする自由診療クリニック

がんが免疫から隠れる仕組みとは?

  • 執筆者の写真: 院長 永井 恒志
    院長 永井 恒志
  • 6月20日
  • 読了時間: 5分

更新日:6月20日

がん細胞が免疫細胞から隠れているイラスト

「免疫はがんを攻撃する力を持っている」と聞くと、多くの方が「それならなぜ、がんができてしまうのか?」という疑問を持たれると思います。


実はがんは、ただ単に免疫の監視から逃げているわけではありません。自らの姿を隠し、免疫を欺き、さらには免疫細胞の力を奪う“ずる賢さ”を身につけているのです。


このようながんの「免疫回避機構」は、免疫治療を考えるうえで最も重要なテーマのひとつです。


がん免疫療法の目的は、単に免疫を活性化するだけではなく、がんが張り巡らせた“ステルス機能”を解除し、再び免疫ががんを認識・攻撃できる状態を取り戻すことにあります。


では、がん細胞は具体的にどのようにして免疫の目を逃れているのでしょうか?


■記事執筆
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。




1. がん細胞は「目印(抗原)」を消す


免疫ががん細胞を認識するための大きな手がかりは、がん細胞特有のタンパク質、つまり「腫瘍抗原」です。ところが、がん細胞はこの抗原を自らの表面から減らしたり、完全に消してしまうことがあります。


特に問題となるのが、「HLAクラスI分子(ヒト白血球抗原)」の発現低下です。これはT細胞ががん細胞を識別するうえで欠かせない“名札”のようなものですが、多くの進行がんではHLAの発現が部分的または完全に失われており、T細胞から“見えない”状態になってしまいます。


2020年の論文(Sade-Feldman et al., Cell Reports)では、メラノーマ患者の中でHLAクラスIが消失した腫瘍は、免疫チェックポイント阻害剤への反応が著しく低いことが報告されており、がん免疫治療の限界の一因ともなっています。




2. 「免疫のブレーキ」を利用する


がん細胞は、自らが攻撃されないように、免疫細胞に“ブレーキ”をかける物質を発現します。その代表格がPD-L1です。


PD-L1は、免疫細胞(特にT細胞)が持つPD-1という受容体と結合することで、T細胞に「攻撃をやめなさい」という信号を送ります。つまり、がん細胞は自分の表面にPD-L1を出すことで、T細胞の活動を止めてしまうのです。


免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボやキイトルーダ)は、このPD-1/PD-L1の結合をブロックすることで、T細胞に再びアクセルを踏ませ、がん細胞を攻撃させる仕組みです。


がんの進行に伴ってPD-L1の発現が上昇することはよく知られており、最近の研究(Chen et al., Nature, 2022)では、がんが免疫治療を受けた後にPD-L1をさらに増やす“免疫逃避の進化”も報告されています。




3. 免疫を抑える環境を自らつくる


がんは単に“隠れる”だけではなく、自分の周囲に「免疫が働きにくい環境=免疫抑制性マイクロ環境(TME)」を構築します。これには複数の要素が関わっています。


  • Treg細胞(制御性T細胞):がん細胞は、免疫を抑える働きをもつTreg細胞を周囲に集め、T細胞やNK細胞の攻撃を抑制します。

  • M2型マクロファージ(TAM):がんは本来“敵”であるはずのマクロファージを味方につけ、がんの増殖や血管新生を助けさせます。

  • 免疫抑制性サイトカイン(TGF-β、IL-10など):がんはこれらの物質を分泌して免疫細胞の活性を鈍らせます。


このように、がん細胞はまるで“免疫抑制の要塞”を築いて自らを守っているのです。




4. 免疫細胞の“エネルギー”を奪う


がん細胞は自らの増殖のために大量のブドウ糖を消費します。その結果、腫瘍の内部ではT細胞やNK細胞が十分に活動するためのエネルギー(ATPやグルコース)が不足し、免疫疲弊(immune exhaustion)と呼ばれる状態になります。


このような環境では、免疫細胞は“働きたくても働けない”状態になり、がんに対する攻撃力を失っていきます。最近では、この“免疫疲弊”を回復させるために代謝改善を狙った治療薬や栄養療法も研究されており、がん治療と栄養・運動・生活習慣の関係も注目されています。




がんの隠れ技に対抗する最新の治療戦略


がんの巧妙な免疫回避戦略に対抗するため、現代のがん免疫療法は以下のような“多段階アプローチ”を取るようになっています。


  1. チェックポイント阻害剤で免疫のブレーキを解除する

  2. ワクチン療法でがんの目印(抗原)を免疫に教え込む

  3. 免疫細胞療法(NK細胞やT細胞)で直接的な攻撃力を補う

  4. TME(腫瘍微小環境)の再構築で、免疫が働きやすい環境を整える


特に最近では、免疫治療+放射線、+抗がん剤、+ウイルス療法など、組み合わせ療法(コンビネーションセラピー)による効果増強が注目されています。がんの“防御力”が強くなった現代だからこそ、“総力戦”による突破が求められているのです。


当院でも多様な免疫治療を提供し、患者様に合わせて組み合わせ療法を実施しております。


当院の治療:




まとめ:がんを「見える化」し、免疫を再起動せよ


がんは単なる異常細胞ではありません。あたかも“知能を持つ敵”のように、巧妙に隠れ、免疫をだまし、自らを守りながら増殖を続けます。しかし、それに気づき、戦略的に対応することができれば、免疫は再び立ち上がり、がんに立ち向かうことができます。


その第一歩は、「がんがなぜ見えないのか」を知ることです。そして、最新の医療技術とあなた自身の免疫力を信じ、再起動すること。がんとの戦いは、頭脳戦であり、心理戦でもありますが、“見抜く力”を取り戻せば、必ずチャンスはあります。




免疫療法専門の当院へご相談ください。


銀座鳳凰クリニックは、「患者の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。


標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。


銀座鳳凰クリニックの受付
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