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がん免疫療法を専門とする自由診療クリニック

がん細胞を見逃さない免疫細胞の仕組み|活性化が治療の鍵

  • 執筆者の写真: 院長 永井 恒志
    院長 永井 恒志
  • 6月20日
  • 読了時間: 7分

更新日:6月20日


がん細胞は、もともと自分の体の細胞から生まれた“異常な細胞”です。これが免疫の難しさを生む理由のひとつです。インフルエンザウイルスや細菌のような外敵とは違い、がんは「自分に偽装した敵」なので、免疫の目をごまかすことができてしまうのです。


にもかかわらず、健康な人の体では、免疫がこの“敵の偽装”を見抜き、日々排除していることがわかってきています。


では、免疫は一体どうやってがん細胞を見つけ出し、攻撃しているのでしょうか?そこには、驚くほど精巧な「免疫の監視ネットワーク」が存在しています。


■記事執筆
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。




がん細胞には“目印”がある


がん細胞には、正常な細胞にはない「異常なたんぱく質(抗原)」が出現しています。これを「腫瘍抗原」と呼びます。たとえば、変異したp53やHER2、WT1などがその代表です。こうした腫瘍抗原は、がん細胞の表面や内部に存在しており、免疫にとっての“危険信号”になります。


この目印を最初に察知するのが、「樹状細胞」という免疫の司令塔のような存在です。樹状細胞は体内をパトロールし、異物を見つけるとそれを食べて(貪食し)、その情報を「抗原提示」として他の免疫細胞に伝えます。


この情報を受け取ったT細胞が、「この抗原は危険だ」と認識すると、攻撃態勢に入り、がん細胞に向かって“ピンポイント”で攻撃を仕掛けるのです。


T細胞は、がん細胞の持つ抗原をHLA(主要組織適合抗原)という情報カードと照合して、「これは異常」と判断して攻撃します。この仕組みが、がん免疫の基本です。




T細胞・NK細胞・マクロファージの連携プレー


がん免疫には複数の細胞が関わっており、それぞれが得意分野を持っています。T細胞はがんに対する“精密攻撃”を担当しますが、その他にも重要なプレイヤーが存在します。



NK細胞


まず、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)。NK細胞はがんやウイルス感染細胞など、“怪しい細胞”に即座に反応して攻撃を仕掛ける即応型の免疫細胞です。がん細胞が抗原を隠してT細胞の目をごまかしても、NK細胞は「自己か他者か」だけで判断し、正体不明の細胞を見逃しません。



マクロファージ


そして、マクロファージ。これは、がん細胞を直接食べてしまう貪食細胞でありながら、がんにとっては“味方”にも“敵”にもなる二面性を持っています。実際、がんはマクロファージを自分の味方につけ、腫瘍の進行を助けさせることもあるため、治療の場では“がん関連マクロファージ(TAM)”の制御も重要なテーマとなっています。


最新の研究(DeNardo & Ruffell, 2019, Nat Rev Cancer)では、これらの細胞の相互作用を調整することで、免疫のがん排除機能を最大化できることが示されています。





がんの“ステルス戦略”に打ち勝つには?


がん細胞は自分が免疫に見つからないように、いくつもの“ステルス機能”を使います。たとえば、自分の表面から腫瘍抗原やHLAを消してしまったり、免疫を抑える物質(TGF-βやIL-10など)を周囲にまき散らして、免疫細胞の働きを鈍らせたりします。


さらに、がんはT細胞にブレーキをかけるPD-L1というタンパク質を発現することで、免疫からの攻撃を逃れます。これが、免疫チェックポイントの仕組みです。


つまり、がんとの闘いは「見つけるか、隠れるか」の攻防戦なのです。


そのため、がん免疫療法では単に免疫細胞を活性化するだけでなく、「がんのステルス機能を解除する」「免疫細胞に正しくターゲットを認識させる」ことが成功の鍵となります。





免疫細胞を“再教育”する治療法も


最近では、がんに対する免疫反応をより正確に、かつ強力にするために、免疫細胞を人工的に“再教育”する技術も登場しています。


たとえば、樹状細胞ワクチンは、がんの目印となる抗原を人工的に樹状細胞に学習させてから体内に戻すことで、免疫ネットワーク全体をがん認識モードに切り替える治療法です。臨床研究では、乳がんや前立腺がん、膠芽腫などでの延命効果が報告されています。


また、CAR-T細胞療法のように、T細胞の表面に“がん認識用のアンテナ”を遺伝子レベルで追加する技術も発展しており、特に血液がん(B細胞性白血病や悪性リンパ腫)で画期的な効果が報告されています。


将来的には、AIやマルチオミクス解析を活用して、「あなたのがんに対して、どの免疫細胞がどう動いているか」を可視化し、それに合わせたオーダーメイド治療が日常的に行われる時代がくるでしょう。


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まとめ:がんとの“かくれんぼ”に勝つために


がん細胞は「自分の細胞に偽装した敵」であり、免疫に見つからないように巧妙な手段を使って生き延びようとします。しかし、私たちの免疫は決して無力ではなく、がんを見抜き、学習し、記憶し、排除する力を持っています。


その力を最大限に引き出すのが、免疫治療の役割です。そしてその出発点こそ、「がんを正しく見つける力」、つまり免疫の認識能力なのです。


がんとの戦いは「力でねじ伏せる」時代から、「賢く見抜いて制御する」時代へとシフトしています。あなたの体の中には、がんを見つけて闘う力がすでに備わっているのです。




がん治療についてお気軽にご相談ください。


銀座鳳凰クリニックは、「患者の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。


銀座鳳凰クリニックの受付
銀座鳳凰クリニックの受付

院では、患者様ご自身の血液から取り出した免疫細胞を増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。


主な治療法には、WT1樹状細胞ワクチン療法NK細胞療法免疫チェックポイント阻害剤などがあり、患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。

当院の治療法

主なメリット

主な副作用・リスク

副作用が少ない/幅広いがん種に対応/標準治療と併用可

軽度の発熱・発赤

強力・持続的な免疫活性化/副作用が少ない

軽度の発熱・発赤

拒否反応が少ない/QOL維持/再発・転移予防

軽度の発熱・発疹

根拠が確立されている/進行がんにも有効

免疫関連有害事象(irAE:免疫が過剰に働き、正常組織にも炎症が起こることがある。定期的な検査・管理が必要。)

軸となるWT1樹状細胞ワクチン療法は、標準治療が難しい末期がんや複数の臓器に転移した場合にも適応が期待でき、放射線治療や他の治療法との併用も可能です。

※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。


また、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与まで院内完結し、患者様の負担を最小限に抑えることが可能です。治療は外来で行い、入院の必要はありません。


銀座鳳凰クリニック院長 永井恒志
銀座鳳凰クリニック院長 永井恒志

銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。


標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。






\ 初回医療相談は無料です。/



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