がんに負けない体をつくる ― 免疫力を高める生活習慣とは
- 院長 永井 恒志

- 11月11日
- 読了時間: 5分
更新日:11月21日

がんに打ち勝つためには、医師が行う治療だけでなく、患者様自身の“治る力”=自然治癒力や免疫力を最大限に引き出すことが重要です。実際、免疫細胞の活性やバランスは、生活習慣によって大きく左右されることがわかってきました。
例えば、十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事、ストレスの少ない日常。これらの基本的な生活習慣は、どれも免疫の質を高める上で欠かせない要素です。
今回は、「がんと闘う力を内側から育てる」ための生活習慣について、詳しくご紹介します。
睡眠|免疫の回復と再生の時間

まず最も基本となるのが睡眠です。睡眠中、特に深いノンレム睡眠の時間帯には、体が損傷の修復やホルモン分泌、免疫細胞の再生を行っており、“自然免疫”の強化に直結しています。
ある研究では、6時間未満の睡眠が続くとNK細胞の活性が最大70%も低下するという結果が報告されています(Irwin et al., Psychosomatic Medicine, 1996)。また、慢性的な睡眠不足はコルチゾールなどのストレスホルモンを増やし、免疫抑制を招きます。
理想的な睡眠時間は7~8時間。また、就寝時間が毎日バラバラだと体内時計が乱れて免疫も不安定になるため、「起きる時間を一定にする」ことが免疫維持のコツといえるでしょう。
運動|血流と免疫細胞の活性化

適度な運動は、免疫細胞の循環を良くし、全身の免疫監視機能を高める働きがあります。特にウォーキングやストレッチ、ヨガといった軽度〜中等度の有酸素運動は、がん患者様にとっても取り入れやすく、副作用も少ない有益な方法です。
2020年のシステマティックレビュー(Pedersen et al., Nat Rev Immunol)では、週に150分程度の軽~中強度の運動が、T細胞やNK細胞の機能を高め、がんの進行抑制にも関与していると報告されています。
ただし、体調に応じて無理のない範囲で行うことが大前提です。治療中の疲労が強い場合は、椅子に座っての軽い体操や、深呼吸を取り入れるだけでも効果はあります。
食事|腸と免疫を同時に整える

腸には免疫細胞の7割が集まっており、何を食べるかがそのまま免疫の“材料”になると言っても過言ではありません。
以下のような食習慣が、特に免疫力の維持・向上に効果的とされています:
発酵食品(納豆、味噌、キムチ、ヨーグルトなど):腸内フローラを整え、免疫の調整をサポート。
水溶性食物繊維(ゴボウ、海藻、果物など):善玉菌のエサとなり、腸管免疫を活性化。
ビタミンD(鮭、きのこ、卵など):免疫調整に必須。サプリメントでの補充も有効。
オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油など):抗炎症作用があり、免疫の暴走を抑制。
また、過度な糖分や加工食品、アルコールの摂取は炎症反応を引き起こす可能性があるため、なるべく控えるよう心がけましょう。
関連コラム:食事と免疫:がんにおける腸内環境の意外な重要性
心の安定|ストレスのコントロールが免疫を守る

心の状態は免疫の働きと密接に関係しています。慢性的なストレスは免疫細胞の機能を低下させ、がんとの闘いに不利になります。
そのため、生活の中で“心がホッとする時間”を意識的に取り入れることが大切です。
例えば:
毎日の感謝日記(その日嬉しかったことを3つ書く)
好きな音楽を静かに聴く時間を作る
自然の中を散歩する
アロマやお風呂でリラックスする
こうした行動は、自律神経のバランスを整え、ストレスホルモンの分泌を減らし、免疫細胞の活性を取り戻す効果があることが複数の研究で示されています。
関連コラム:がんとストレス:心の健康が免疫に与える影響
生活習慣の積み重ねが「治療効果を支える」
がん治療における生活習慣の改善は、“補助的なもの”ではなく、“治療効果を底上げする土台”と考えるべきです。
治療薬が免疫細胞を活性化しようとしても、その土台となる体の状態が整っていなければ、その効果も十分に発揮されません。逆に言えば、生活の質を高めることが、そのまま免疫力の底上げにつながるのです。
まとめ:「治療に参加する生活習慣」を始めよう
医師や医療チームに任せきりの治療ではなく、患者様自身が“治療に参加する”という意識が、がんに立ち向かううえで非常に大きな意味を持ちます。
睡眠・運動・食事・心の安定——これらはどれも、特別な器具や薬を必要とせず、誰にでも取り入れられる“最強の治療サポート”です。 一歩ずつ、無理なく、でも継続的に。あなたの生活があなたの免疫を強くし、未来を変える力になります。
当院はがん免疫療法専門のクリニックです。
銀座鳳凰クリニックは、「患者様の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。
主な治療法としては、
など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。
※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。
さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。
銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。
標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。
― ステージ4・末期がんでも諦めない免疫治療 ―
TEL:03-6263-8163

■記事監修
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。





