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〈がん免疫療法専門〉ステージ4のがん治療

肝臓がんに挑む免疫療法 ― 自分の力で再発を防ぐ効果とは?

  • 執筆者の写真: 医師 柳井 啓文
    医師 柳井 啓文
  • 11月4日
  • 読了時間: 6分

更新日:11月21日


子宮頸がんを表すイラスト

肝臓はがんが再発しやすい臓器の一つとしても知られています。手術後5年再発率が70~80%とも言われており、「手術や抗がん剤で治療したのに、また出てきてしまった」―そんな患者様も少なくありません。


こうした中で注目されているのが、「免疫療法」という新しい治療法です。 最近では、体の“がんを見つける力”を取り戻すことで、再発や進行を抑える試みが進んでいます。





肝臓がんの特徴 ― なぜ再発しやすいのか?


肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれます。 症状が出にくいため、発見されたときにはすでに進行していることも多いのです。


また、肝臓は再生能力が高く、血液の流れも豊富です。そのため、がん細胞が一度定着すると、がんにとって良い微小環境を形成しやすいため、すぐに再び増えてしまうという厄介な特徴があります。


さらに、慢性肝炎や肝硬変が背景にある場合、肝臓内の免疫環境が変化しており、がんを攻撃する免疫細胞(T細胞やNK細胞)が働きにくい状態になっています。 ここで「免疫療法」が登場します。




免疫療法の3つのタイプ ―「ブレーキを外す」「見つける」「攻撃する」


肝臓がんに対する免疫療法には、いくつかの方法があります。 難しく聞こえるかもしれませんが、実はそれぞれの治療には「免疫のどこを助けるのか」という役割の違いがあります。 ここでは、代表的な3つのタイプをわかりやすくご紹介します。



① 免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ・キイトルーダなど)


がんは、免疫の攻撃を避けるために「攻撃しないで」という“ブレーキ信号”を出しています。 オプジーボ(ニボルマブ)やキイトルーダ(ペムブロリズマブ)は、このブレーキを解除して眠っていた免疫を再び働かせる薬です。


実際、国際的な臨床試験(CheckMate-040試験:El-Khoueiryら, Lancet, 2017)では、 オプジーボを使用した患者さんの約20%で腫瘍が縮小したと報告されています。 ブレーキを外して免疫を活性化することで、長期生存を実現するケースも出てきています。


しかし、免疫のブレーキをはずしても、そもそも免疫細胞の機能自体が低下してしまった場合はどうすればよいでしょうか?実際がんの微小環境では免疫細胞の機能が大きく抑制されることがわかっています。そこで下のような治療法も注目を集めています。





② 樹状細胞(DC)ワクチン療法


―「免疫の司令塔」としての機能を回復し、リンパ球にがんの情報を伝える、免疫の起爆剤


樹状細胞(じゅじょうさいぼう)は、免疫の“司令塔”のような存在です。がんの特徴(抗原)を免疫に伝えることで、T細胞ががんを攻撃できるようにします(抗原提示)。


肝臓がんでは、WT1AFPといったがん特有の抗原を使った樹状細胞ワクチンが研究されています。 これにより、免疫が「がんを見逃さず、的確に狙う」状態を作り出すことが期待されています。



③ NK細胞・NKT細胞療法


―がんを攻撃する「即戦力」と樹状細胞「司令役」を活性化させる、免疫の活性剤


NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、がん細胞を見つけると即座に攻撃を仕掛ける生まれながらの戦士です。 

一方、NKT細胞は「攻撃」と「免疫全体の活性化」の両方を行う、免疫のハイブリッドとも言われます。


近年では、αGalCer樹状細胞ワクチン療法でNKT細胞を活性化し、 さらにNKやNKTを含んだリンパ球細胞補充療法で、 がんによって弱まった肝臓の免疫バランスを立て直す試みが進んでいます。


この治療は、「免疫の土台を立て直す」という点で、これまでの抗がん剤とは全く異なる新しい発想です


免疫チェックポイント阻害剤でブレーキを外し、樹状細胞ワクチンでがんを見つけ出し、NK/NKT細胞療法で攻撃力を高める

この3つの力を組み合わせることで、がんを「逃がさない・見逃さない・再発させない」体づくりを目指します。



当院の治療




免疫療法はどんな効果があるのか?


肝臓がんに対する免疫療法の効果は、まだ研究段階のものも多いですが、 いくつかの臨床試験では希望の光が見えています。


  • 免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)

    進行肝がんに対し、客観的奏効率(がんが縮小した割合)は約20%前後。 特に一部の患者では、2年以上の長期生存が報告されています。


  • 樹状細胞ワクチン+NKT細胞療法の併用 

    当院でも肝硬変+進行性肝がんに対して、複合がん免疫細胞療法を行うことで肝予備機能の改善と肝臓がんの消退のどちらも得ることができた症例を経験しています。 まだ少数例ですが、「再発までの期間が延びた」という報告もあります。





免疫療法の副作用と注意点


免疫療法は“自分の免疫”を使うため、抗がん剤のような強い脱毛や吐き気は少ない傾向があります。しかし、免疫療法である以上、体内の免疫反応を適切に起こす必要があります。そのため、免疫細胞を投与した後の発熱反応を重視して見ていきます。


また、免疫が過剰に働くと 肝臓や臓器の負担になることもあります。 とくに肝臓がんでは、既に肝機能が弱っている場合が多いため、慎重に経過を見ながら治療を進めることが重要です。




まとめ ―肝臓がんは「免疫を取り戻す」ことで再発を防ぐ


肝臓がんの治療は、これまで「手術・ラジオ波・抗がん剤」が中心でした。 しかし今、免疫療法によって「自分の免疫で再発を防ぐ」という新しいステージに入ろうとしています。


  • オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害剤で免疫のブレーキを外す

  • 樹状細胞ワクチンでがんを見つけ、免疫を起動するアクセルの力を取り戻す

  • NKT細胞療法で免疫の攻撃力を高める


こうした多角的な免疫療法の発展により、「再発を恐れずに暮らせる未来」が少しずつ現実のものになりつつあります。




当院はがん免疫療法専門のクリニックです。


銀座鳳凰クリニックは、「患者様の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。


銀座鳳凰クリニックの受付
銀座鳳凰クリニックの受付

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。


主な治療法としては、


など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。

※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。


さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。


銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。


標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。


-がん治療・免疫療法について-




銀座鳳凰クリニック医師  柳井 啓文

■記事監修

銀座鳳凰クリニック医師

柳井 啓文

医師・医学博士。救急・集中治療医としてドクターヘリなどの救命最前線で重症患者の治療に携わる一方、オーストラリアで基礎・臨床研究に従事し複数の国際研究グループを主導、100編超の英語論文を発表。救急現場で培った判断力と先端研究で得た科学的視点を併せ持ち、再生医療・細胞治療の医療実装を推進している。


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