尿管がん 〜症状・進行・治療・余命と向き合うために〜
- 院長 永井 恒志

- 6月10日
- 読了時間: 5分
更新日:9月12日

「尿管がん」と診断されると、「どんな病気なのか」「治る可能性はあるのか」「どのくらい生きられるのか」――多くの疑問や不安が押し寄せることと思います。
尿管がんは、尿路の中でも比較的まれな悪性腫瘍で、早期発見が難しく、進行が早いことが特徴です。
今回は、尿管がんの初期〜末期の症状、進行速度、治療方法、そして余命・生存率について詳しくご紹介します。

■記事を書いた人
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
尿管がんとは?

尿管がんは、腎臓から膀胱へ尿を送る“尿管”にできるがんで、医学的には「上部尿路上皮がん」に分類されます。膀胱がんと同じく尿路上皮(移行上皮)から発生します。
発症頻度は全がんの1%未満と少なく、60代以上の男性に多く見られます。
片側の尿管にできることがほとんどですが、腎盂(腎臓内の尿の集まる場所)にもがんがある場合は「腎盂尿管がん」として扱われます。
尿管がんの初期症状と進行のサイン

尿管がんは初期の自覚症状が少なく、以下のような症状が出て初めて発見されるケースが多いです。
【初期症状】
肉眼的血尿(赤い尿、ピンク色の尿)
尿検査での潜血反応(自覚なしでも出現)
排尿時の違和感や軽い痛み
【進行時の症状】
側腹部や背中の鈍い痛み(尿の流れがせき止められる)
腎機能の低下(尿が腎臓に逆流する)
尿管の閉塞による水腎症
感染や発熱を繰り返す
尿路は一度がんができると広がりやすく、腎臓・膀胱・周囲のリンパ節や肺・骨などに転移する可能性もあります。
尿管がんの進行速度と診断時のステージ
尿管がんは、腎臓や膀胱に比べて組織が薄いため、がんが周囲に浸潤しやすく、比較的進行が早いとされます。
診断時における進行度(ステージ)は以下のように分類されます:
ステージ | 病態 | 治療の選択肢 |
ステージⅠ〜Ⅱ | 粘膜内または浅層浸潤 | 手術での根治が可能 |
ステージⅢ | 筋層・脂肪層への浸潤 | 手術+抗がん剤併用が標準 |
ステージⅣ | リンパ節・遠隔転移あり | 化学療法、免疫療法、緩和ケア中心 |
尿管がんの治療法:早期なら手術、進行例では全身治療へ
尿管がんの治療は、がんの進行度と全身状態により大きく異なります。
手術療法(根治的腎尿管摘除術)
標準的治療。腎臓 + 尿管 + 膀胱の一部を一括で摘出
ステージⅠ〜Ⅱの患者様では根治(治癒)可能性が高い
片腎がなくなるため、術後の腎機能低下への配慮が必要
化学療法(抗がん剤)
ステージⅢ〜Ⅳでは、シスプラチン+ゲムシタビンが第一選択
術後補助療法や、手術不能例の延命治療として使用
腎機能によりシスプラチンが使えない場合、他の薬剤を検討
免疫チェックポイント阻害剤
近年、進行尿路上皮がんに対してPD-1 / PD-L1阻害薬(アテゾリズマブ、ニボルマブなど)が使用されるように
化学療法後の再発や、化学療法が使えない患者様にも適応あり
副作用管理ができる医療施設での実施が推奨されます
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疼痛や出血、排尿困難、感染などの症状が進んだ場合
生活の質(QOL)を守り、穏やかに過ごす時間を支える治療
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尿管がんの生存率と余命
生存率はステージによって大きく異なります。
ステージⅠ〜Ⅱ:約70〜90%(5年生存率)
ステージⅢ:約40〜50%
ステージⅣ:10〜20%未満
ただし、全身状態・腎機能・年齢・合併症・治療内容によっても個人差が大きいため、「余命●ヶ月」とは一概に言えません。
進行が早い反面、早期発見で根治可能な症例も多く、また免疫療法の登場で延命可能性も拡がってきています。
まとめ:早期発見と希望ある選択が鍵
尿管がんはまれながら、見逃されやすく、進行が早いがんです。 だからこそ、血尿などの小さな変化に気づき、早期発見・早期治療を進めることが重要です。
また、ステージが進んだとしても、
手術
抗がん剤
免疫療法
緩和ケア など、多くの選択肢があり、“自分に合った治療”を選ぶことができます。
あなた自身の命と生活を守るために、信頼できる医療チームとともに、一歩ずつ前へ進んでいきましょう。
当院はがん免疫療法専門のクリニックです。
銀座鳳凰クリニックは、「患者の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。
主な治療法としては、
など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。
※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。
さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。
銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。
標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。
-当院はがん免疫療法専門のクリニックです-
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