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〈がん免疫療法専門〉ステージ4のがん治療

抗腫瘍免疫を高める方法とは?

  • 執筆者の写真: 院長 永井 恒志
    院長 永井 恒志
  • 7月25日
  • 読了時間: 5分
免疫によって外部からの敵をはじき返しているイラスト

がん免疫療法が注目される背景には、「私たちの体には、がんを見つけて排除する力が本来備わっている」という事実があります。この力を“抗腫瘍免疫”と呼び、治療や再発予防のカギを握る存在です。


では、この“がんを攻撃する免疫力”をどのように高めることができるのでしょうか?ただ免疫を「強くする」だけでなく、的確に、効率よく、がんを標的にできる状態を目指す必要があります。


本稿では、抗腫瘍免疫の基礎から強化戦略までを、わかりやすく整理してご紹介します。



― ステージ4・末期がんでも諦めない免疫療法 ―

TEL:03-6263-8163

銀座鳳凰クリニック院長 永井恒志

■記事を書いた人

銀座鳳凰クリニック院長

永井 恒志

医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。




抗腫瘍免疫とは?どんな細胞が働いている?


抗腫瘍免疫は、「がん細胞を見つけて、正確に攻撃・排除する免疫反応」を意味します。以下の3つの細胞が主役です。



① 樹状細胞(DC:Dendritic Cell)


がんの抗原を見つけて“T細胞に伝える”司令塔。がん免疫の出発点。



② T細胞(特にCD8+細胞傷害性T細胞)


がん細胞をピンポイントで認識・攻撃する主力部隊。がんの情報を記憶する「メモリーT細胞」も存在。



③ NK細胞(Natural Killer Cell)


がんに“証明書”がない(HLA欠損など)場合でも、直感的に異常を見抜いて攻撃できる即応型の免疫細胞。


この3者が連携してこそ、強い抗腫瘍免疫が成り立ちます。





抗腫瘍免疫がうまく働かない理由とは?


がん患者さんの体内では、この抗腫瘍免疫の連携がしばしば崩れています。主な原因は以下の通りです。


  • がん細胞が抗原を隠す(HLAや抗原の発現消失)

  • がんが免疫のブレーキ(PD-L1など)を利用してT細胞を無力化

  • がんが免疫抑制性サイトカイン(TGF-β, IL-10など)を放出し、免疫全体を“眠らせる”

  • 腫瘍周囲にTreg細胞やM2マクロファージを集め、敵に味方させる


これらを打ち破るためには、単純な「免疫増強」では不十分で、がんに特化した“免疫の再教育”が必要となります。




抗腫瘍免疫を強化する3つのアプローチ



① 樹状細胞ワクチンで“免疫の司令塔”を再起動


がん免疫の起点となる「樹状細胞」を活性化させる方法が、樹状細胞ワクチン療法です。患者の血液から単球を取り出し、体外で樹状細胞へ分化させて、がん抗原を教え込んで再び体内へ戻します。


これによりT細胞ががんを“明確に敵と認識”し、攻撃のスタートラインに立つことができます。実際、前立腺がん・乳がん・膠芽腫などでの臨床応用が進んでおり、再発抑制や生存期間延長の報告も増えています(Palucka & Banchereau, Nat Rev Cancer, 2012)。




② 免疫チェックポイント阻害剤で“ブレーキ解除”


がんが免疫にかけるブレーキ(PD-1/PD-L1やCTLA-4)を解除することで、T細胞を再び活性化させる治療です。


  • ニボルマブ(オプジーボ)

  • ペムブロリズマブ(キイトルーダ)

  • アテゾリズマブ(テセントリク)


これらはすでに複数のがんで保険適用されており、がん免疫の“再起動スイッチ”として活躍しています。




③ T細胞・NK細胞・NKT細胞の“質”を上げる免疫細胞療法


免疫細胞を体外で増殖・活性化させてから体に戻す治療も、抗腫瘍免疫を強化する重要な方法です。


  • 活性化リンパ球療法(ALC)

  • αガラクトシルセラミド樹状細胞ワクチン療法

  • 活性化NK細胞療法


これらは、治療後や再発リスクが高い患者さんにおいて、“免疫パトロール”を補強する目的で使われることが増えています。副作用が少ないため、外来での継続も可能です。


詳しく見る



栄養・代謝・腸内環境の最適化も重要


免疫細胞が力を発揮するには、「燃料」も必要です。


  • ビタミンD: 免疫の活性・調節に不可欠

  • 亜鉛・セレン: T細胞の成熟・活性化に関与

  • 短鎖脂肪酸(酪酸など): 腸内フローラが産生し、Tregの適切な抑制に寄与


また、腸内環境の乱れは免疫治療の効果を低下させるため、発酵食品や食物繊維を積極的に摂取し、「免疫が働きやすい体内環境」を整えることが大切です(詳細は第9回参照)。




今後の研究と未来への展望


現在、抗腫瘍免疫を強化するためにさまざまな先端技術が開発されています。


  • ネオアンチゲンワクチン: 患者ごとのがん遺伝子変異を使って完全オーダーメイドで作るワクチン

  • CAR-T細胞・TCR-T細胞療法: T細胞に“がん認識アンテナ”を遺伝子導入し、攻撃力を劇的に強化

  • がん抑制ウイルス療法: 腫瘍内に投与し、がん細胞を破壊しつつ、免疫を刺激する二重効果を狙う(例:G47Δ、T-VEC)


これらの技術は一部で承認され、今後はより多くのがん種に応用が進む見通しです。一方で、CAR-T細胞療法のように固形癌では効かない上に、1回の治療費が3000万円以上かかるなど複数の課題があり、実際の臨床応用が簡単ではない治療法も多くあります。




まとめ:がんに強い免疫は「戦略的に育てる」


抗腫瘍免疫は、単に「免疫力が高い」だけでは成立しません。 “がんを見つけ、攻撃し、記憶する”という高度な連携が必要です。


その力を最大限に引き出すには

  • 樹状細胞による抗原提示

  • T細胞とNK細胞の質と量の確保

  • ブレーキ解除(免疫チェックポイント阻害)

  • 腸内環境や栄養状態の最適化


といった多方面からのアプローチが欠かせません。「がんに強い免疫」は、偶然ではなく“戦略的に育てる力”です。そしてその主役は、あなた自身の細胞です。



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