ANK免疫療法とは?がんに挑む新しい免疫治療
- 院長 永井 恒志

- 9月12日
- 読了時間: 5分
更新日:10月22日

がん治療における「免疫療法」という言葉は、近年ますます注目を集めています。その中でも「ANK免疫療法」という名前を耳にした方もいるのではないでしょうか。
ANK療法は、日本で開発された“がん特化型の免疫療法”のひとつで、患者様自身の免疫細胞を利用してがんを攻撃する方法です。まだ自由診療として行われている段階ですが、従来の抗がん剤や放射線治療とは異なるメカニズムを持ち、「副作用が少なく、長期的な効果を期待できる可能性がある」として注目されています。
今回は、このANK免疫療法についてわかりやすく解説していきます。
ANK免疫療法とは何か
ANK免疫療法は「活性化NK細胞療法(Activated Natural Killer cell therapy)」の略です。
患者様の血液からNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を取り出し、体外で強力に活性化・増殖させた後、再び体内に戻すことでがんを攻撃させる治療です。
従来の「NK細胞療法」との違いは、単に数を増やすのではなく、質の高い“活性型NK細胞”を作り出すことに重点を置いている点です。
NK細胞とがんの関係
NK細胞は、人間の免疫システムにおける“先兵”のような存在です。
がん細胞やウイルスに感染した細胞を、事前の学習なしに直接攻撃できる
免疫システムの中で最も早くがん細胞を排除しようとする
しかし、がんが進行すると「免疫逃避」という仕組みを利用し、NK細胞が働きにくくなります。
その結果、体内のNK細胞は“数はあっても弱っている状態”に陥ってしまうのです。
ANK療法は、この「眠ってしまったNK細胞を覚醒させる」ことを狙っています。
ANK療法の仕組み

ANK療法の流れは次のようになります。
患者様の血液を採取する
NK細胞を分離し、特別な培養液で2週間ほどかけて増殖・活性化する
活性化したNK細胞を点滴で患者様に戻す
体内でがん細胞を攻撃させる
この過程で作られるNK細胞は、通常の10〜100倍の殺傷能力を持つと報告されており(Koh et al., Cancer Immunol Res, 2013)、再び体内に入るとすぐにがん細胞を攻撃できるとされています。
当院では、NK細胞を約3週間培養する独自技術を開発いたしました。 (当院ではこれを「高度活性化NK細胞療法」と呼称しています)
臨床研究での効果と課題
これまでの研究では、ANK療法が以下のような可能性を示しています。
進行がん患者様において生活の質の改善
がんの増殖抑制効果(特に固形がんでの報告がある)
抗がん剤や放射線治療との併用で相乗効果
一方で、課題も残されています。
標準治療と比べた大規模な臨床試験がまだ少ない
治療費が高額(1クールで数百万円かかる場合がある)
治療効果に個人差が大きい
つまり「有望ではあるが、まだ確立された治療法とは言えない段階」といえます。
標準治療との併用の可能性
興味深いのは、ANK療法が化学療法や免疫チェックポイント阻害剤との併用で効果を発揮する可能性がある点です。
例えば、抗がん剤で腫瘍を縮小させつつ、ANK療法で免疫を強化することで、再発を防ぐ戦略が考えられます。実際に、米国での臨床研究では、NK細胞療法と免疫チェックポイント阻害剤の併用で効果が高まる例が報告されています(Liu et al., J Clin Invest, 2020)。
関連:当院の免疫チェックポイント阻害剤
まとめ:ANK免疫療法は「がん免疫の切り札」になり得るか?
ANK免疫療法は、患者様自身の免疫細胞を強化してがんに立ち向かう新しい治療法です。
副作用が少なく、体にやさしい
強力に活性化したNK細胞が直接がんを攻撃
標準治療との併用で相乗効果の可能性
ただし、現時点では自由診療に限られ、費用も高額であり、誰でも受けられる治療ではありません。
それでも「がんを免疫の力で克服する」という夢に一歩近づく技術であることは間違いありません。今後の臨床試験で確かなエビデンスが積み重なれば、標準治療の柱のひとつとして広く普及していく可能性があります。
当院はがん免疫療法専門のクリニックです。
銀座鳳凰クリニックは、「患者様の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。
主な治療法としては、
など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。
※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。
さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。
銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。
標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。

■記事を書いた人
銀座鳳凰クリニック院長
永井 恒志
医師、医学博士(東京大学)、東海大学大学院客員准教授。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て、東京大学大学院医学系研究科の文部教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
-がん治療・免疫療法について-
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