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〈がん免疫療法専門〉ステージ4のがん治療

子宮頸がんに対する免疫療法 ― 自分の力でがんと戦う新しい治療法

  • 執筆者の写真: 医師 柳井 啓文
    医師 柳井 啓文
  • 10月30日
  • 読了時間: 6分

更新日:11月21日


子宮頸がんを表すイラスト

子宮頸がん(しきゅうけいがん)は、女性に多いがんの一つです。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染がひとつの原因であることがわかっており、ワクチンによる予防が広く行われています。


しかし、すでにがんが発生してしまった場合には、手術・放射線・抗がん剤治療が標準的な治療です。


最近では「免疫療法(めんえきりょうほう)」という新しい選択肢にも注目が集まっています。


ここでは、子宮頸がんに対する免疫療法について、解説します。



1. 免疫療法とは?


私たちの体には、がん細胞を見つけて攻撃する「免疫」という防御システムがあります。ところが、がん細胞はこの免疫から逃げる仕組み(免疫回避)を備えており、その結果として増殖を続けてしまいます。


免疫療法は、「免疫を活性化することで、免疫から逃れようとするがんを積極的に攻撃していく」治療法で、がん細胞を体の力で抑え込むことを目指します。




2. 子宮頸がんで使われている主な免疫療法



(1)免疫チェックポイント阻害剤 ― ペムブロリズマブ(キイトルーダ)


がん細胞は「PD-L1」という分子を使って、免疫細胞(T細胞)の働きを止めてしまうことがあります。このブレーキを外して免疫を再び活性化させるのが「免疫チェックポイント阻害剤」です。


代表的な薬は ペムブロリズマブ(キイトルーダ) です。第Ⅱ相 試験(KEYNOTE-158試験, J Clin Oncol., 2019)では、この薬を使った患者様の約15%で腫瘍が小さくなり、特に PD-L1が多いタイプのがんで効果が高いことが報告されました。


この結果を受けて、アメリカFDAはペムブロリズマブを「化学療法後に進行したPD-L1陽性の子宮頸がん」 に対して承認しています。


更に、国際共同第Ⅲ相試験:KEYNOTE-826試験が行われました。


再発または転移性の子宮頸がん患者様を対象に、「ペムブロリズマブ+化学療法(±ベバシズマブ)」 vs 「プラセボ+化学療法(±ベバシズマブ)」という試験が行われ、 全生存期間(OS) や 無増悪生存期間(PFS) の改善が報告されました。


アメリカFDA (米国食品医薬品局):アメリカの連邦政府機関で、食品・医薬品・化粧品・医療機器などの安全性と品質を監督する機関。 KEYNOTE-826試験:治療抵抗性・再発・転移性子宮頸がんに対し、ペムブロリズマブ(キイトルーダ) とプラチナ製剤化学療法(±ベバシズマブ)併用療法の有効性と安全性を評価した国際共同第III相臨床試験。

引用文献




(2)ワクチン療法


・予防としてのワクチン


子宮頸がんはHPVが原因で起こるため、ウイルス由来のたんぱく質(E6・E7抗原)を標的とした治療用ワクチンの研究が進んでいます。


このワクチンは「がんを攻撃する免疫細胞を訓練する」役割を持っています。HPVワクチンは予防接種法に基づく定期接種であり、小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象に公費で行われています。


HPVワクチンの普及と適切な子宮がん検診で子宮頸がんの撲滅が期待されています。



・治療としてのワクチン


また、がんになった後にも、特定の抗原を利用した「樹状細胞ワクチン療法」も注目されています。 樹状細胞はがん免疫の司令塔のような存在で、がんに特有の抗原を提示することでT細胞やNKT細胞を活性化し、がんを攻撃する力を高めます。



(3)NK細胞・NKT細胞療法


がん細胞を直接攻撃できる「ナチュラルキラー(NK)細胞」や「NKT細胞」を増やして戻す治療も行われています。これらの細胞はもともと体の中に存在する“がんへの攻撃役”です。


特にNKT細胞は、がんに対する免疫反応のスイッチを入れる働きがあり、樹状細胞ワクチン療法と組み合わせることで、より強い抗腫瘍効果が期待できます。 近年の研究では、NKT細胞を活性化すると子宮頸がんにおける免疫環境(がんを攻撃しやすい状態)を整える可能性があることが報告されています。


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3. 免疫療法のメリットと注意点


メリット

  • 自分の免疫の力を使うため、副作用が比較的少ない

  • 抗がん剤が効きにくい場合でも効果が出ることがある

  • 長期的に再発を防ぐ可能性がある


注意点

  • 効果が出るまでに時間がかかることがある

  • すべての患者様に効くわけではない

  • 免疫療法はただ自身の細胞を培養して、戻すだけの治療だけでなく、投与後の免疫応答を細かく評価し、必要に応じて免疫活性を促すキメ細かい調整が必要




4. 今後の展望


子宮頸がんに対する免疫療法は、まだ発展途上ではありますが、確実に前進しています。放射線治療や抗がん剤と免疫療法を組み合わせることで、より高い治療効果を目指す研究も進んでいます。


特に、当院で行っている


などは、がん免疫を根本から立て直すアプローチとして注目されており、子宮頸がんに対しても再発抑制や生存期間延長の可能性が期待されています。


当院では、末期未分化子宮頸がんに対する免疫療法と放射線療法の組み合わせで、化学療法に対する感受性を回復させがんを消失することに成功した症例を国際誌に報告しています。(Cureus2024;16:e57144)


関連:当院の論文研究




まとめ


  • 子宮頸がんでは、免疫チェックポイント阻害剤やワクチン療法などの免疫療法が登場し、治療の幅が広がっています。

  • 自分の免疫を利用するため、体への負担が少ないという特徴があります。

  • 現時点でも標準治療と併用して行うことで大きな成功を収めた症例が見られます。今後は免疫療法が治療の中心になるかもしれません。


がんと闘う力は、私たちの体の中にもともと備わっています。 免疫療法は、その力をもう一度引き出してくれる、希望のある新しい治療法といえるでしょう。




当院はがん免疫療法専門のクリニックです。


銀座鳳凰クリニックは、「患者様の『生きる』にすべてを尽くす」をモットーに、転移がんや進行がんの患者様に対して免疫細胞治療を専門的に提供しています。


銀座鳳凰クリニックの受付
銀座鳳凰クリニックの受付

当院では、患者様ご自身の血液から免疫細胞を取り出し、体外で増殖・活性化させた後、再び体内に戻すことで、免疫細胞ががん細胞をより効果的に認識し攻撃するよう促す治療を行っています。


主な治療法としては、


など患者様一人ひとりの状態に合わせて最適な治療法を提案しています。

※治療の適応や併用の可否に関しては医師にご相談ください。


さらに、院内に細胞培養加工施設を併設しているため、採取から培養・品質管理・投与までを院内で完結でき、外来通院で治療を受けていただけます。


銀座鳳凰クリニックは、患者様一人ひとりのがんの状態やご希望に合わせて、そのときどきで最適な治療をきめ細かくご提案しています。


標準治療が難しいと診断された方や、治療の選択肢に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。


-がん治療・免疫療法について-




銀座鳳凰クリニック医師  柳井 啓文

■記事監修

銀座鳳凰クリニック医師

柳井 啓文

医師・医学博士。救急・集中治療医としてドクターヘリなどの救命最前線で重症患者の治療に携わる一方、オーストラリアで基礎・臨床研究に従事し複数の国際研究グループを主導、100編超の英語論文を発表。救急現場で培った判断力と先端研究で得た科学的視点を併せ持ち、再生医療・細胞治療の医療実装を推進している。


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