乳がん ステージ4 〜生存率・余命と向き合いながらできること〜
- 院長 永井 恒志
- 4月30日
- 読了時間: 5分

「乳がんステージ4」と診断されたとき、多くの方が最初に頭に浮かべるのは、「あとどれくらい生きられるのか?」という不安かもしれません。
“ステージ4”とは、がんが原発部位を越えて、他の臓器(肺、骨、肝臓、脳など)に転移している状態を指します。
たしかに完治(根治)は難しい段階ではありますが、「治らない=何もできない」ではありません。現代の医療では、乳がんのステージ4でも長期生存や生活の質を保つことが可能になってきています。
今回は、乳がんステージ4の生存率や余命の考え方、そして今できる治療や選択肢について、わかりやすくご紹介します。

ステージ4乳がんとは?
乳がんは、がんの広がり(TNM分類)によってステージが1〜4に分けられます。
ステージ4は「遠隔転移」がある状態を意味し、がんが乳房を越えて他の臓器に及んでいます。
多くの場合、以下のような転移先が見られます:
骨転移(最も多い)
肺転移
肝転移
脳転移
症状は転移部位によって異なり、「腰痛」「息切れ」「肝機能の異常」「頭痛・めまい」などで発見されることもあります。
ステージ4乳がんの生存率・余命の目安
国立がん研究センターの統計によると、乳がんステージ4の5年生存率は約40%前後とされています(診断時年齢や転移部位によって変動あり)。
一昔前までは10~20%と言われていた時代もありましたが、近年は治療の進歩により、5年・10年を超えて生活できる方も増えています。
また、「余命」とは平均値であって、あくまで“統計上の目安”であり、あなた自身の寿命ではありません。医師が「余命半年」と伝えても、実際に5年以上元気に過ごしている方もいますし、その逆もあります。
大切なのは、「数字にとらわれすぎないこと」。今できることに目を向け、希望のある治療を前向きに検討することが大切です。
治療の目的は「治す」から「コントロールする」へ
ステージ4乳がんでは、手術によってがんを取り切ることは難しいため、治療の目的は“がんと共に生きる”ことにシフトします。
目指すのは、
がんの進行をなるべく抑える(腫瘍の縮小・安定化)
症状を和らげ、生活の質を保つ
できるだけ長く“自分らしい日常”を送る
そのために、治療法は以下のように選ばれます。
ステージ4乳がんの治療選択肢
① ホルモン療法(ホルモン受容体陽性の場合)
エストロゲンの作用を抑えることで、がん細胞の増殖を防ぎます
比較的副作用が少なく、外来での継続が可能
ホルモン療法が効かなくなったら、抗がん剤へ切り替え
② 分子標的薬
HER2陽性の場合は、ハーセプチンやパージェタなどを使用
がん細胞の増殖に関わる特定の分子を標的にして“ピンポイント攻撃”が可能
③ 抗がん剤(化学療法)
がんの広がりや症状が強い場合に使用
複数の薬剤を組み合わせて行うこともあり、副作用対策も進化
④ 放射線療法
骨転移による痛みや脳転移による症状を和らげるために使用
一部ではがんの縮小目的にも活用されます
⑤ 免疫療法(条件付き)
三陰性乳がんの一部では、PD-L1陽性例に対してアテゾリズマブ+化学療法が効果を示すことが確認されています(IMpassion130試験)
今後も免疫療法の適応拡大に期待されています
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しかし、緩和ケアは「治療をやめること」ではなく、「生活の質を守るための医療」です。痛みや吐き気、呼吸困難、不安、うつなどへの支援を受けながら、がん治療も併用できるのです。
むしろ緩和ケアの導入が早いほど、治療の効果や生活の満足度が上がるという報告もあります。
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しかし、治療法は年々進歩しており、今では「完治を目指さずとも、がんと共に生きる」ことが可能な時代です。
長く安定した病状を保ちながら働き続ける人
家族と旅行や趣味を楽しむ人
治療を受けながら、日常を大切に生きる人
そうした“がんと共に生きる人生”を選び、前向きに生きている患者さんはたくさんいます。
まとめ:「生存率」「余命」は“参考値”でしかない
「乳がんステージ4」と言われても、すべての希望が失われたわけではありません。
生存率や余命はあくまで統計にすぎず、あなたの命の時間は、あなたと医療チームがこれから創っていくものです。
治療法は進化を続け、免疫療法や個別化医療の可能性も広がっています。どうか、信頼できる医療者とともに、納得できる治療と人生の選択を見つけてください。
-がん治療の選択肢を探している方-
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