胃がん ステージ別の特徴・症状・余命・治療法を理解する〜
- 院長 永井 恒志
- 7 日前
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更新日:6 日前

胃がんは、日本人に多いがんのひとつで、年間約12万人が新たに診断されています。 診断を受けたとき、「ステージはいくつですか?」と医師に尋ねる患者さんが多いのは、それががんの進行具合や予後(余命)を左右する重要な指標だからです。
今回は、胃がんの「ステージ分類」について、ステージごとの特徴や症状、治療法、そして生存率・余命の目安を、前向きに理解できるようわかりやすく整理してご紹介します。

胃がんのステージ分類とは?
胃がんのステージは、国際的なTNM分類に基づき、「がんの深さ(T)」「リンパ節転移の有無(N)」「遠隔転移(M)」の組み合わせからステージ0〜4の5段階に分類されます。
ステージ | 主な特徴 |
ステージ0 | がんが胃の粘膜内にとどまる(超早期) |
ステージ1 | 粘膜下層まで浸潤 or 軽度のリンパ節転移 |
ステージ2 | 筋層や漿膜に達する、または複数リンパ節転移 |
ステージ3 | がんが広がり、リンパ節転移が多数 |
ステージ4 | 他の臓器(肝臓、腹膜、肺など)へ遠隔転移あり |
ステージ別の症状の違い
胃がんは早期には症状がほとんどなく、進行してから気づかれることが多いのが特徴です。
ステージ0〜1(早期胃がん)
無症状または軽い胃もたれ、食後の違和感
健診のバリウム検査や胃カメラで偶然発見されるケースが多い
ステージ2〜3(進行胃がん)
食欲不振、体重減少、胃の痛み、胸やけ、嘔吐など
がんが胃壁を越えて広がり、消化機能に影響
ステージ4(末期胃がん)
がんが他臓器に転移し、腹水、黄疸、倦怠感、貧血、吐血などの全身症状
生活の質が低下しやすく、治療と同時に緩和ケアが必要
ステージ別の治療法と選択肢
ステージ0〜1:内視鏡治療・手術で根治可能
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):がんが粘膜内に限局している場合、体への負担が少ない治療
胃の部分切除 or 全摘手術+リンパ節郭清:転移リスクがある場合に適応
▶ 生存率:5年生存率は90%以上
ステージ2〜3:手術+補助化学療法
手術でがんを取り除いた後に抗がん剤(S-1など)を服用
再発を防ぐための「術後補助化学療法」が標準治療
一部で術前に化学療法を行うことも
▶ 生存率:ステージ2:約60〜80%、ステージ3:約40〜60%
ステージ4:化学療法・緩和ケア中心の治療へ
遠隔転移がある場合、根治手術は難しく、抗がん剤を中心とした全身治療
FOLFOX、カペシタビン+シスプラチン、ペムブロリズマブ(HER2陽性やMSI-H例)など
治療によって腫瘍が縮小すれば「conversion surgery(根治を目指す後手術)」が検討されることも
▶ 生存率:5年生存率は10〜20%未満。ただし、一部で長期生存するケースもあり
生存率・余命の“目安”と“希望”
ステージ | 5年生存率(概算) |
ステージ1 | 約90〜95% |
ステージ2 | 約60〜80% |
ステージ3 | 約40〜60% |
ステージ4 | 約10〜20%未満 |
ただし、「余命は平均値であって“あなたの未来”ではありません」。 近年は個別化医療の進展や免疫療法の導入により、ステージ4でも数年にわたって治療を継続できる患者さんが増えてきています。
胃がんの治療における新しい選択肢
分子標的薬(トラスツズマブ、ラムシルマブなど)
免疫チェックポイント阻害剤(ペムブロリズマブなど)
がん遺伝子パネルによる個別化治療の実用化
特にHER2陽性例やMSI-H例では免疫療法が著効するケースがあり、今後の治療選択肢の幅がさらに広がっていくと期待されています。
まとめ:「ステージ=終わり」ではなく、「次の一歩」へ
「胃がんステージ○」という言葉は、治療を考えるうえで大切な情報ではありますが、その数字だけで希望を閉ざす必要はありません。
早期であれば内視鏡で完治も可能
進行例でも治療により再発を防ぎ、長く生活できる
ステージ4でも希望のある選択肢は確実に広がっている
大切なのは、あなた自身の体・価値観・生活に合った治療方針を、信頼できる医療チームと一緒に考えることです。
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